医療を金儲けの場に 混合診療解禁をねらう「選択療養」制度

公開日 2014年05月25日

規制改革会議が提案した「選択療養(仮称)」制度は、患者と医師の契約によって、安全と有効性のエビデンスが担保されない自費診療を保険診療に上乗せして行うことを可能にするものであり、実質的な混合診療の全面解禁である。「再生医療」と称した自費診療によって、少なくない医療被害が報道されているが、「選択療養」制度は、このような「危険な医療」を保険診療が下支えする仕組みである。

◆「選択療養」制度の主な問題点


新しい医療を長期にわたり自由料金で「販売」

「選択療養」制度は保険収載を前提としておらず、保険外併用療養のうち、保険収載を前提とした高度医療を対象とする「評価療養」とは大きく異なる。そのため、「選択療養」になると保険外医療として固定され、医療保険による給付の道が閉ざされることになる。

安全性と有効性が確認された新しい医療でも「評価療養」として申請せず、「選択療養」に組み込めば、長期にわたり自由料金で「販売」することも可能となる。「選択療養」のねらいは金儲けの仕組みづくりにある。

2004年12月の厚生労働大臣と規制改革担当大臣の混合診療にかかわる「基本的合意」は、一定のルールの下で保険診療と保険外診療の併用を認めつつも、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」とした。今回の「選択療養」の提案はこの合意にも反するもので、到底認められない。

患者の自己責任で、保険外診療を契約

規制改革会議が示した「選択療養」を実施する際の「一定の手続き・ルール」(3月27日/論点整理1)は、①患者に対して、「医師は併用する保険外診療について診療計画書を策定し、必要性とリスクを書面を用いて十分に説明し、患者はこれを納得した上で、書面により併用を承諾する」②保険者に関して「患者・医師間の診療契約書を保険者に届け出ることで保険給付が行われるようにする」「患者から保険者に対して保険給付の切り替えを申請し、保険診療に悪影響を及ぼすことが明らかな場合等を除き、保険給付が認められるようにする」としている。

これは保険外診療の安全性や有効性の問題を医師と患者間の契約に丸投げし、混合診療の適否を保険者に判断させるものだ

安全性・有効性と患者の命は後回し

また、規制改革会議は、「保険外診療の安全性・有効性を確認」するとして、改めて「一定の手続き・ルール」(4月16日/論点整理2)を発表した。

「一定レベルの学術誌に掲載された査読された2編以上の論文がある」、「国際的に認められたガイドラインに掲載されている」、「全国統一的な中立の専門家によって評価する」などである。しかし、「一定レベルの学術誌」とは何を指すのか不明であり、このような曖昧な条件で医療の安全性・有効性が担保されるものではない。また、「国際的に認められたガイドライン」、「全国統一的な中立の専門家によって評価」というのならば、国内での検証を進めて、保険収載に向けた手続きに乗せるのが筋道である。

さらに、「論点整理2」は、安全性・有効性の確認について「できるだけ迅速に行われるべき」と主張しているが、安全性・有効性の検証を拙速に進めることは国民の命を危険にさらすことにほかならない。

「選択療養」撤回へ会員署名に取り組む

一貫して公的医療給付の削減を要求し、医療の市場化・営利化を求めてきたのが規制改革会議である。医療の安全性・有効性を軽視し、国民の命と引き換えに医療を金儲けの場にすることは許されない。安全性と効果が確認された新しい治療法はすみやかに保険収載し、国民が等しく医療の恩恵をうけられるようにすべきである。協会は、国民の医療と健全な医療保険制度を守り拡充する立場から、混合診療の全面解禁につながる「選択療養」制度に反対し、その撤回を求める声明を4月23日発表した(東京保険医協会「混合診療を解禁する「選択療養」制度に反対する」)。また、協会は「選択療養」制度に反対するFAX会員署名を集め、5月22日の国会行動に取り組んだ。

規制改革会議は「選択療養」を6月に策定予定の新「成長戦略」に盛り込む予定である。「選択療養」制度反対の声を束ねて「保険外診療の拡大反対」「必要な医療は保険で」の声を大きくすることがより重要になっている。

(『東京保険医新聞』2014年5月25日号掲載)