すすむ「国保の空洞化」 保険料20年で倍加、国庫負担率は半減

公開日 2014年07月05日

高すぎる保険料が払えずに国保から締め出される人たちが相次ぎ「国保の空洞化」が加速している。

国保料が払えないのは372万2,000世帯と全加入世帯の2割近い。保険証がなく全額を窓口で支払う「資格証明書」を発行されているのは27万7,000世帯にも達している(2013年6月)。

厚労省の調査でも、国保加入者の所得水準は健保組合加入者の4割程度なのに対して、保険料の平均負担は健保加入者の約2倍であることが明らかになっている。

図1 国保加入者の所得分布
図2 国保会計の国庫負担率と保険料

国保加入者の所得分布(図1)を見ると、所得200万円以下の低所得世帯が全体の75%を超えている。「所得」に対する「国保保険料」の割合(保険料負担率/2012年度)は、所得1~50万円未満で31.5%、50~100万円未満で18.8%、100~150万円で、15.6%となっており、低所得世帯ほど保険料負担率が高くなっている。

雇用破壊などで急増した失業者や非正規雇用労働者が国保加入者の多くを占めるようになったことが空洞化に拍車をかけている。

図2 国保会計の国庫負担率と保険料 そもそも国保の保険料は事業主負担がなく、適切な国庫負担なしには成り立たない。1984年、医療費の45%とされていた国保への定率国庫負担を38.5%に引き下げ、その後も国庫負担の削減・廃止で24.8%(2011年)でに半減し、国保料は値上げを続けている(図2)。

東京23区も4月から年間4,638円の大幅な負担増になった。これは2017年から国保の運営が都道府県に移行されることを見据え、賦課総額に導入していなかった高額療養費を4年間で段階的に導入することが主な要因になっている。保険料の徴収強化など小手先の対策ではなく、国庫負担率を引き上げ、国保の運営に国が責任を負うべきだ。

「国保の広域化・都道府県単位化」については、プログラム法に基づき来年の通常国会に法案を提出する予定だ。国保を市町村ごとの運営から都道府県ごとの運営に切り替え、国保会計への市町村の支出金をやめさせる。多くの市町村は、国保の保険料を抑制するために一般財源を国保会計に繰り入れている。

一方、東京都は1995年に324億円あった都独自支援が2010年には41億円に、愛知県では28億円が1億8,000万円、北海道は12億円だった繰入金がゼロになるなど、繰入金の後退が市町村国保財政をさらに厳しくしている。繰り入れがなくなれば、医療費の増加が保険料アップに直結し、高すぎる保険料のさらなる上昇を招く。

基準病床数などを定めた医療計画は都道府県が策定しており、国保の運営も都道府県が運営することによって医療費削減に導こうという狙いがある。

(『東京保険医新聞』2014年7月5日号掲載)