骨太の方針2014を閣議決定 「医療費の削減競争」へ

公開日 2014年07月15日

安倍内閣は6月24日、「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)、「日本再興戦略改定―未来への挑戦」(新成長戦略)と「規制改革実施計画」を閣議決定した。

安倍政権が示した経済・財政政策の方針は「企業収益の更なる拡大」のため、法人実効税率の20%台への引き下げ(2013年4月現在35.64%)や公的年金の株式市場への投入などの規制緩和で、財界・大企業の目先の利益を優先する一方、国民の暮らし、命と健康を犠牲にするという内容である。

「骨太の方針」では、社会保障給付について、医療・介護を中心に「いわゆる『自然増』も含め聖域なく見直し、徹底的に効率化・適正化していく必要がある」と明記した。

2015年医療保険制度改正に向けて都道府県ごとに医療費支出目標を導入し、医療費適正化計画の実行性を強める。目標設定するための標準的な算定式は国が示すこととされた。また、国保の都道府県単位化、「医療提供者に対して良質かつ効率的な事業運営を促す報酬の在り方」の検討、薬価改定を診療報酬改定から切り離すことも盛り込まれた。

ありとあらゆる機会を利用して医療費を切り詰め、社会保障費を抑制しようとする姿勢が如実に現れている。医療費適正化へのインセンティブ強化の観点から保険者が負担している後期高齢者支援金の加算・減算の仕組み導入も計画されており、都道府県を「医療費の削減競争」に駆り立てる狙いが明確になった。

医療で『稼ぐ』システムの導入を狙う

「稼ぐ力」の強化を謳う「新成長戦略」は医療分野で、保険外併用療養費制度とともに、混合診療の全面解禁ともいえる「患者申出療養(仮称)」の創設に向け、来年の通常国会に関連法案提出を目指すことや、看護師・薬剤師等の医師以外の者の業務範囲の在り方の検討、医療・介護などを一体的に提供する「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)」の創設などを盛り込んだ。

公的保険外のサービス産業の活性化として、個人・保険者に対する健康・予防インセンティブの付与を検討していることも見過ごせない。「ヘルスケアポイントの付与・現金給付の普及」「保険料によるインセンティブ」などが構想されており、健康ヘルス産業が皆保険制度の枠組みを利用し「稼ぐ」システムの導入を目論んでいる。

医療介護のICT化も検討課題にあげられており、マイナンバー制度が医療費削減や営利企業の金儲けに利用される危険性が指摘されている。

規制改革実施計画では、「患者申出療養(仮称)」の創設、保険者が全てのレセプトを点検可能とする仕組みの導入、急性期を担う医療機関のみに適用されるよう7対1入院基本料の在り方の検討、プライマリーケアを専門に担う医師の育成、看護師の特定行為の対象を見直す枠組みの検討などが盛り込まれた。

(『東京保険医新聞』2014年7月15日号掲載)