【解説】東京版 国家戦略特区 都民のくらしは蚊帳の外

公開日 2014年07月15日

安倍内閣は4月末に「大胆な規制改革を実行する突破口」と位置づける国家戦略特別区域(特区)に東京圏(千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、大田区、渋谷区、神奈川県、千葉県成田市)を指定した。

東京都は7月3日、前述の都内9区に加え、新たに台東区、中野区、豊島区の3区を指定区域に追加するよう、政府に提案する方針を固めた。

国家戦略特区は地域限定で、雇用、医療、教育、農業、都市開発などの分野で、規制を緩和・撤廃する。従来の特区とは異なり、国家戦略特区は安倍首相が議長を務める「特区諮問会議」が権限を持ち、上から決める仕組みになっている。諮問会議は、竹中平蔵元経済財政相ら財界メンバーで固められている。

東京都の国家戦略特区構想10大プロジェクト

東京都の国家戦略特区構想の10大プロジェクト(図参照)のうち医療関連では、⑤創薬のメッカ形成プロジェクト(日本橋創薬ビジネスプラットフォーム開設。国と連携しながらプロの目利きにより、国内研究拠点に埋もれたシーズ〔薬の“種”〕を発掘・選定し、製品化を支援)、⑥東京都版PMDA創設プロジェクト(国(PMDA)が行っているジェネリック医薬品の承認審査業務を都でも可能とすることにより、製品化(保険適用)までの期間を大幅に短縮)、⑩外国人向け安心医療・教育提供プロジェクト(特定の国の医師免許等保有者の医療行為を容認、外国人専用病床は基準病床数適用を除外、株式会社による病院の設立を容認しメディカルツーリズムにも対応)の3つをあげている。

10大プロジェクトの他の7項目を見ても、都民の生活・くらしとの関係は極めて希薄で、都民のための施策でないことは明らかだ。

新たに特区に指定される予定の3区(上野、中野、池袋)についても、駅前の再開発が目的だとの指摘もある。都民の血税が、巨大開発や多国籍企業のための金儲けできる環境づくりに使われる恐れがある。

都民のくらしは厳しさを増しており、今、東京都に求められるのは、都民のくらしを応援する施策の実現だ。都民の医療・福祉を蚊帳の外に追いやる「特区構想」は都民の支持を得られないであろう。

(『東京保険医新聞』2014年7月15日号掲載)