厚労省令 医療事故調 センターへの報告 厳格な「非識別化」求める

公開日 2015年06月25日

厚生労働省は5月8日、「医療法施行規則の一部を改正する省令」厚生労働省令第100号を公表した。

このなかで、病院等の管理者が行う「医療事故調査・支援センターへの報告」について、「報告を行うに当たっては、(中略)当該医療事故に係る医療従事者等の識別(他の情報との照合による識別を含む。次項において同じ)ができないように加工した報告書を提出しなければならない」と規定し、極めて厳格な非識別化を求めている。

また、病院等の管理者が行う「遺族への説明」に関しても、「センターへの報告」と全く同様に厳格な“非識別化”を求めている。

厚労省は、医療事故調査制度について、「(WHO)ドラフトガイドライン上の『学習を目的としたシステム』にあたります」と明記し、ホームページで公表している。同省ホームページ「医療事故調査制度について」の「Q1.制度の目的は何ですか?」に答えたもので、「WHOドラフトガイドライン」が掲げる非懲罰性・秘匿性・独立性の3原則を示し、わが国の制度はこの考え方に「整合的なものとなっています」と答えている。

“非識別化”とは、医療事故に係る医療従事者等について、種々の資料等と照らし合わせても、個人を特定できないようにすることを意味し、とりわけ医療事故調査制度における「非懲罰性」と「秘匿性」を担保するためには欠かすことができない仕組みだ。

“非識別化”されない場合、医療事故に係る医療従事者等が個人として特定され、医療事故調査制度が「説明責任」「責任追及」を目的としたシステムに変質してしまうことが指摘されている。

今回、「医療事故調査・支援センターへの報告」「遺族への説明」については、通知やガイドライン等よりも上位にある厚労省令で厳格な“非識別化”を求めた。

これは、WHOドラフトガイドラインが示した「学習を目的にしたシステム」の考え方を具体化する重要な要素の1つが規定されたものであり、極めて注目される。「学習」を目的とした調査制度にすることによってのみ、真相究明に近づき、医療安全に結びつけることができる。

協会は調査制度創設をめぐる動きを注視し、今後も情報発信を継続していく。

(『東京保険医新聞』2015年6月25日号掲載)