適時調査講習会――激増する適時調査 日常的な「対策」が肝要

公開日 2016年11月25日

適時調査講習会2016

 協会病院有床診部は11月10日、京都府保険医協会事務局次長の花山弘氏を講師に、適時調査対策講習会を開催、45人が参加した。

 社会保険事務局から厚生局へ業務移管した2008年以降、適時調査の件数と返還金額が激増し、現在では個別指導よりも適時調査による自主返還金の方が多い。行政側の指導内容も巧妙になっており、しっかりした対策が必要だ。
 花山氏は、以前は施設基準は承認制で責任は行政側にあったが、届出制になってからは、届出手続きが正しく行われているかが医療機関側の責任として問われることになったとして、一般病棟7対1入院基本料が特別入院基本料になり、1年分返還した額が11億円超になった事例等を紹介。適時調査による自主返還の期間は最大5年といわれており、多額の返還金につながることから、日常診療のなかで対策を怠らない姿勢が肝要だと強調した。

 施設基準は、届出を済ませたらすべて完了というわけではなく、要件を満たし続ける必要があり、届出内容と異なった場合は速やかに変更届を行う必要がある。花山氏は、適時調査で指摘されやすいポイントとして、看護職員等の人員配置、平均在院日数、看護業務関連、入院料の5対策等を挙げた。特に返還事項に指摘されやすいのは、人員・要員不足等による入院料等の施設基準不適合であり、看護要員数の計上誤り等により要員不足となるケースが多いことから、看護要員管理でポイントになる勤務表・様式9を管理する重要性を説明した。

 具体的には、決裁欄や資格区分欄をしっかり確認すること、勤務予定・実施を正確に反映すること、計上すべき時間・会議と除外する時間・会議を把握すること等、適時調査の対策は日常業務の一環として位置づけて、適正に整備していくくことが非常に重要であることを特に強調した。 参加者からは「忘れかけていた対応方法を再確認した」「入院基本料に関わる項目の説明が大変参考になった」等の声が出された。

 最後に細田悟病院有床診部長が、適時調査の自主返還金は個別指導と同様に法的根拠が不明確であり、なぜ自主返還をしなければならないのか、行政を糾していきたいと述べた。一方で、近年は適時調査による自主返還金が全くない医療機関も増えており、自主返還金をゼロにして行政側にメリットがないことを分らせていくことも大事だと呼びかけ、閉会した。

(『東京保険医新聞』2016年11月25日号掲載)