保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【主張】社会保障の充実こそ「都民ファースト」

公開日 2016年12月05日

 「都民ファースト」を掲げる小池百合子都知事が誕生し、4カ月が経過した。築地市場の豊洲移転問題、東京五輪の会場整備費削減に取り組む知事の姿が連日報道されている。

 小池都知事は11月18日の定例記者会見で、豊洲市場への移転時期について、来年夏ごろに判断するとした。「科学的な検証がベース。移転が確実とはまだ言えない」と強調したが、移転の白紙撤回ではなく、豊洲移転に向け一歩踏み込んだとの見方もある。豊洲市場への移転延期による市場業者への補償については、市場会計で処理することを明らかにした。市場会計は、市場業者の使用料・利用料で成りたっており、「業者に負担を押し付けるのか」と批判の声があがっている。豊洲盛り土問題では歴代市場長ら都幹部18人の減給処分が実施される見込みだが、移転の最終判断を下した石原元都知事の責任は曖昧なままだ。

 豊洲市場建設工事をめぐる官製談合疑惑では、11月24日、都議会/豊洲移転問題特別委員会の委員長を務めている都議に、工事受注企業3社から献金が行われていた事実が明らかになった。東京五輪後の選手村の活用をめぐっても都幹部と大手ゼネコングループの癒着が問題となっている。さらなる疑惑解明のため、徹底した調査と情報公開を期待したい。

 都民の血税を湯水のように投入しながら、豊洲移転問題は暗礁に乗り上げている。盛り土問題にとどまらず、そもそも土壌改良が困難な汚染された土地に市場を移転するという政策判断が正しかったのか、小池都知事には根本的な検証を強く求めたい。豊洲移転を推進してきた東京都、都議会各会派、前・元都知事らの責任は重大だ。

 五輪会場の見直しをめぐっては、都調査チームのコスト削減案に不備があることが、都議会で明らかになっており、整備費削減をどこまで追求できるのか小池都知事の本気度がこれから問われることになる。
 医療・介護・福祉分野における小池都知事の具体的な政策は曖昧で、第三回都議会定例会(9月28日)における知事所信表明では、地域包括ケアシステム等にわずかに言及したのみである。地域医療構想、国保広域化、特養ホーム増設など待ったなしの課題にどう取り組むのか注視したい。

 一方、小池都知事は待機児童問題で保育所設置基準の規制緩和を打ち出した。9月9日には、「小規模保育所」の年齢制限の撤廃、部屋の明るさや保育者資格をはじめとした設置基準の大幅な規制緩和を、国家戦略特区諮問会議に要望している。待機児童の解消は重要な課題だが、保育環境の悪化を伴う規制緩和の提案には首を傾げざるを得ない。「子どもファースト」の実現を目指すならば、認可保育所の拡充と保育の「質」向上の財源を真っ先に確保すべきだろう。

 また小池都知事は、公的介護保険サービスと保険外の自己負担サービスを同時に提供する「混合介護」を、国家戦略特区を活用し都内で解禁するよう国に働きかけることを明らかにした。介護事業者が付加サービスや料金を自由に設定できるようにするのが狙いだ。このような規制緩和を実施すれば、公的介護保険の役割をさらに後退させ、経済的余裕のないものは介護サービスを受けることができなくなるだろう。

 東京都が公的介護保険を形骸化させ、介護保険サービスから利用者を遠ざけるような施策を行うことは断じて認められない。「混合介護」のような規制緩和ではなく、国に対して公的介護保険の充実を求めるのが都の役割ではないのか。介護職員の待遇改善、介護人材の確保のためには、介護事業所への支援策強化こそ求められている。

 小池都政は「小池劇場」と呼ばれ、「小泉劇場」の再来とも言われている。「自民党をぶっ壊す」として断行された小泉構造改革と行き過ぎた規制緩和は、「医療崩壊(毎年2,200億円の社会保障費削減)」と、「格差と貧困の拡大」をもたらした。われわれは「都民ファースト」の本質を見極め、社会保障の後退につながる規制緩和に対しては異議を唱え続けていく。協会は都民の「医療・介護・福祉の充実を」、「暮らしを支える施策の実現を」の声に応え、対都請願で要求した各項目の実現に向けて運動を続けていく決意だ。

(『東京保険医新聞』2016年12月5・15日合併号掲載)