東京都の区市町村包括補助事業を活用した麻しん・風しんワクチン未接種児への助成制度創設を求めます

公開日 2016年12月16日

 協会では、昨今の都内の医療機関で発生しているMRワクチン供給不足にあたり会員アンケートを実施し、このまま供給不足が続いた場合に定期接種期間内に打ち終わらない子どもが出る懸念があることから、定期接種期間終了後の任意接種助成制度を実施していない自治体に対して、助成制度の創設を求める要望書を提出しました。
【送付先】 港区、板橋区、立川市、青梅市、昭島市、小金井市、小平市、東村山市、国分寺市、国立市、福生市、狛江市、清瀬市、東久留米市、多摩市、稲城市、羽村市、あきる野市、檜原村、奥多摩町

2016年12月16日

港区長 殿

東京保険医協会
会長 鶴田 幸男
地域医療部長 森本 玄始

 本年8月から発生した関西空港や首都圏を中心とする麻しんの流行により、東京都内でも一部の医療機関ではMR(麻しん・風しん混合)ワクチンの入手が困難となり、なかには定期接種の対象年齢までに接種が受けられない子どもが生じることが懸念されています。

 厚生労働省では、9月9日付の事務連絡により子どもへの定期接種を優先する等の配慮を行うことを各都道府県を通じて医療機関等に要請してきました。しかし、当会が11月末に行った緊急アンケート調査※1では「子どもの定期接種すら困難」との声が散見され、さらに「期間内にMRワクチンの定期接種が終わらない恐れがある」との回答が51%にのぼるなど、今なお混乱が続いている状況がうかがえます。

 定期接種の対象年齢を過ぎた場合は、当該接種費用は全額自己負担となり、MRワクチンでは1回につき1万円程度が保護者の負担として重くのしかかります。とりわけ第2期の対象児(小学校就学年の3月末まで)について、貴区の昨年度のMRワクチン未接種児は594人(対象児2,100人のうち28.3%)でしたが※2、今般の混乱によりいっそうの接種率低下が心配されます。

 東京都では、かねてから「区市町村包括補助事業」として区市町村への各種財政支援を実施しており、MRワクチンの未接種児(18歳まで)についても、区市町村が接種費用の助成を行う場合は、その経費の半額を補助する取り組みを行っています。この制度を活用し、23区では今年度から新宿区、品川区、大田区のほか、台東区でも新たに第2期未接種児への助成を導入し、残すは貴区と板橋区の2区のみとなっています。

 麻しんや風しんなど突発的な流行が起きる度にワクチン不足による混乱が繰り返され、自治体や医療機関だけでなく、子ども・保護者らにとっても大きな負担となっています。さらに2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されるなど、今後も海外からの渡航者がますます増加することが予想され、国内の感染症対策の充実が望まれます。今般の混乱を受けて、当会では国に対して11月21日付で既存の国内ワクチン生産・流通体制を一刻も早く改善するとともに、未接種児への対策と必要な財政措置を行うよう要望しております。あわせて、ぜひ区市町村におかれましても東京都の制度を活用した下記対策を検討していただきたく、ここに要望いたします。

  1. 子どもへの定期接種(MR第1期・2期)について、やむを得ず対象年齢を超えてしまった児への任意接種助成制度を導入してください。

以上

1) 東京保険医協会「ワクチン供給不足問題 緊急アンケート」(調査期間:2016年11月18日~12月2日、回答数:362件)
2) 厚生労働省「麻しん風しん予防接種の実施状況(2015年4月1日~2016年3月31日)」より

東京都の区市町村包括補助事業を活用した麻しん・風しんワクチン未接種児への助成制度創設を求めます[PDF:121KB]
【参考資料】2016年度 都内の区市町村における予防接種助成状況と接種率[PDF:531KB]