小規模多機能型居宅介護・複合型サービス 介護利用者の医療を制限 「在宅診療が必要なら月に一度自宅に戻ること」

公開日 2016年07月25日

 今次改定で小規模多機能型居宅介護と複合型サービス利用者に係る在宅診療料(訪問診療料、在宅時医学総合管理料、施設入居時等医学総合管理料、在宅がん医療総合診療料)の算定に一部制限が設けられた。その中身は、概ね月に一度は必ず自宅に帰ってもらい、その際に自宅で在宅診療を行わなければ、継続して患者を診療できなくなる、というものだ。

医療・介護の給付調整で闇討

 これまで、同サービス利用者への在宅診療に制限はなかった。しかし改定後の「医療と介護の給付調整」のなかで突然、サービス利用開始前30日の間に患家を訪問して在宅診療を行った医師が、当該サービス利用開始後30日間に限って、在宅患者訪問診療料や施設入居時等医学総合管理料等が算定できるとされた。

 介護報酬上、同サービスには看取り連携体制加算やターミナルケア加算が設定されている。サービス利用中の患者が死亡することは想定されているにも関わらず、訪問診療料(およびターミナルケア加算、看取り加算)や在宅医学管理等の算定が制限されるならば、当該事業所での看取り、ターミナルケアへの保険医療の提供が不可能になる。

 これらの施設の運営基準通知は「宿泊サービスの上限は設けず…(略)…ほぼ毎日宿泊する形態も考えられる」としている。今回の利用前30日規定はこの基準と矛盾するものだ。

「戻れない患者はどうなるのか」

 この件については、在宅医療に取り組む会員から問い合わせが殺到している。「小規模多機能の利用者のなかには要介護5の寝たきりの患者もいる。特養などの施設に入所できず、家族介護も見込めず、小規模多機能の宿泊を連続利用せざるを得ない患者たちだ」、「事業所に泊まる日だけを数えて30日間という解釈はできないのか」など、切実な内容ばかりだ。

 施設、在宅、どこであろうと、人生の最期に医療を受けることさえ制限されるようになれば、高齢者が地域で安心して生活できる体制など到底構築することはできない。協会は当該規定を廃止するよう、国に強く求めていく。

(『東京保険医新聞』2016年7月25日号掲載)