患者署名を『元気玉』に―町の人口5%まであと30人!

公開日 2017年02月22日

署名に取り組む片倉理事

 東京保険医協会では、全国の協会・医会とともに新たな患者署名―「医療・介護の負担増の中止を求める請願署名」(5月25日〆切)に取り組んでいます。そのストップ患者負担増署名に熱心に取り組んでいる片倉和彦協会理事にお話を伺いました。

 『元気玉』というのは漫画「ドラゴンボール」での技です。悟空が頭上の両手で支えていた東京ドームよりも大きな丸い玉は、直接の戦闘技でもかめはめ波でも歯が立たなかった魔人ブウ(純粋型)を最後に倒したのでした。この丸い玉には一人ひとりから少しずつ分けてもらった元気がこめられていたのでした。

 署名には強大なパワーがあります。1954年に第五福竜丸事件をきっかけにして杉並の主婦たちが始めた原水爆禁止署名は2,000万人となり、これが原水爆禁止世界大会を作り、3発目の原子爆弾が今のところ投下されずに済んでいることにつながっています。

 1982年に全日本ろうあ連盟は、アイラブコミュニケーションパンフ普及運動を始めました。手話通訳の制度化がなぜ必要か、というパンフレットを一冊200円で販売し、中の葉書に意見を書いて投函してもらうというものでした。2年間で日本の人口の1%である120万部普及の目標を達成し、葉書も2万8,000枚集まりました。

 一枚一枚の葉書には、保険医協会の院長署名のように個人の意見が込められていました。これによって全国の自治体への手話通訳設置が急速に進んだのです。

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 署名を『元気玉』にしていくためのコツを4つ考えました。

(1)署名を小出しにしない

 豆粒ほどの『元気玉』を作って戦力の漸次投入をするのは無駄です。だから全国保険医団体連合会(保団連)は、署名を年中行事にせず、目的がはっきりしているものにするべきです。

(2)署名していただく形を大切に

 医師と職員、医師と患者との関係では、パワーハラスメントに近いことが起きる可能性があります。拒否してもいいんですよ、と、ちゃんと伝えながら署名を依頼することが大切です。

(3)署名の中身は大切

 医療費が財政を圧迫しているという財務省、厚労省の説明がまるっきり違っているとは思っていません。でも、だからといって個人の医療費窓口負担をほいほいと値上げして診察に来ることが罰金になるような形にしていいのでしょうか。
 財務省とか経済財政諮問会議とかの議論には「平民どもはどうせ反対なんかできっこない」という論調があります。でも、今回署名をお願いした方々が、文面を読み、「そんな予定なのか、いや、やはりこれは反対だ」と言っていただいているのが心強いです。

(4)署名は初めトロトロ中パッパ

 今回の署名に取り組んだきっかけは、がんばっている保険医協会事務局員の姿を見たことでしたが、署名は嫌いです。でも、職員や患者さんや福祉施設の人と話してみるとけっこう面白くて、そのうちに俺も集めてやるよ、と言ってくれる人も出てきて、だんだんと楽になってきたのでした。
 自分で立てた「わが町の人口の5%」という目標まであと30人です。

(『東京保険医新聞』2017年2月25日号掲載)