新たに設置する「東京都国保運営協議会」等の公開と市町村国保へのさらなる財政支援を求めます

公開日 2017年03月21日

2017年3月13日

東京都知事 小池 百合子 殿
東京都福祉保健局長 梶原 洋 殿

東京保険医協会 会長 鶴田 幸男
政策調査部長 須田 昭夫

 2014年6月に国会で成立した「医療介護総合確保法」により、2018年4月から都道府県が国民健康保険(以下、国保)の責任主体となり、財政運営や事業の確保等に中心的な役割を担うこととされました。引き続き、保険料徴収等の実務は区市町村が行いますが、とりわけ都道府県の役割の一つとして、区市町村ごとの被保険者数、所得水準、医療費水準の3要素を勘案した「納付金(分賦金)」額を新たに定めることとなります。

 区市町村では、割り当てられた「納付金」の100%全額を東京都に納めなければなりませんが、現在の保険料収納率(全国平均91.45%、東京都平均87.44%、23区82.15%~91.28%)や滞納世帯数(都内50万5,741世帯、国保全世帯数の21.9%)等を鑑みると決して容易なことではありません※1。全国的に見ても東京都は最も苦しい状況に立たされており、区市町村が今回の制度改正を契機に“保険料引き上げ”や“差し押さえ強化”に奔ることとなれば、都内の国保加入者の生活をこれまで以上に圧迫し、さらなる滞納世帯を生み出す恐れがあります。

 いっぽうで、現在も区市町村は保険料軽減や法定の減免等のために約1,133億円を一般会計からの法定外繰り入れを行い、また東京都でも法律が定める「都道府県支出金」のほかに約47億円を市町村国保に財政支援しています※2。両者は国保単年度収入全体の約8.56%にものぼり、今日の国保財政を下支えしています。しかし、それらの財政支援をもってしても、現在の都民の国保保険料は一人あたり平均9万9,615円(公営全体分)で※2、別の試算(夫婦・子ども2人の4人世帯の場合)では、最も高い区の家計負担が年額45万8850円、このうち子ども2人の均等割分として9万2,400円が子育て世帯に重く圧しかかっています※3

 東京都が国に提案しているとおり、本来は国保運営に必要な財源は、地方自治体に負担を転嫁するのではなく、国庫支出金等(2014年度は国保単年度収入のうち22.01%程度)を引き上げるなど、国の責任において確保すべきだと考えます。しかし、施行に向けた検討が本格的にはじまる今、東京都としてこの問題を放置することなく、「都政の透明化」と「誰もが安心して払える国保保険料」の実現に向けたいっそうの施策を講じるよう、以下の事項を要望します。

一、現在までの区市町村との協議内容を都民に知らせるとともに、今後設置する「東京都国保運営協議会」の一般傍聴を可能とし、ぜひ都民が参加できる環境を整備してください

二、この問題について都民を対象とした「説明会」等を開催するなど丁寧な周知を行うとともに、最終的な取りまとめにあたっては十分な期間を設けたパブリックコメントの募集を行うなど、広く都民の意見を反映してください

三、保険料のさらなる高騰が懸念されるため、都民が安心して払える国保保険料となるよう、東京都として「一般会計からの法定外繰入」をいっそう強化してください

以上

※1:厚生労働省「平成27年度 国民健康保険(市町村)の財政状況について =速報=」(2017年2月28日)
※2:東京都福祉保健局「平成26年度 国民健康保険事業状況」より
※3:東京社保協「2016年度版 東京の国保料」試算より、世帯主は40歳代で給与収入400万円、妻は40代で専業主婦、子ども2人、固定資産税は5万円とした場合の「板橋区」「葛飾区」の国保料年額。

東京都国保運営協議会等の公開と財政支援をもとめる要望書(2017.3.17)[PDF:107KB]