保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【銀杏並木】病弱な医師は良医?

公開日 2017年06月26日

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学生の頃、戦争体験のある親から私は「鉄砲玉」と言われていた。朝早く家を出たきり夜遅くまで帰ってこない。毎日楽しくて、やれ「クラブ活動だ」、「友達と約束がある」といっては精力的(?)に動き回っていた。未だに患者さんから、「先生は元気でいいですねえ」と言われている。お陰様で今のところ血圧も正常、採血もまあまあで風邪以外は薬を飲んだことがない。

医者になってから5年目ぐらいだっただろうか…。勤務していた病院の外来で、患者さんが「36.5℃の熱がある」といって来院された。咳も痰もない。「このぐらいは熱ではないですよ」と言っても聞かない。仕方なしに採血したがそれでも納得されないので、これまた仕方なしに風邪薬を処方した。臨床経験を積み、開業して何年かたったころ、ふと「平熱が35.5℃だったら、1℃高ければ熱があると感じるかもしれない」と思い至った。

約10年前、重い学会バックにさらに購入した医学書を入れて左肩にかけ、会場をあちこち1日中動き回っていた。3~4日してから左肩が痛くて腕が上がらなくなった。「しまった。神経が坐滅したか?」と思った。1日で悪くなったのだから1~2カ月もすれば治るだろうと高をくくっていた。

ところが1年以上たっても全く治らないどころか、左の三角筋が萎縮してきた。SPMAか?ALSの初期か?私はあわてて医者にかかった。筋電図検査をしてもらったが正常とのこと。今も私の左腕は途中までしか手が挙がらず、三角筋はもっと萎縮してきた。

この事件(?)以来、いろいろ検査をして陽性所見がなくても、私は患者さんに「何ともありません」とは言わなくなった。自覚症状が一番鋭敏だからである。今まで患者さんに対して不遜な態度を示してきたのではないかと、反省しきりである。

身をもって色々な病気体験のある医者は、患者さんの言葉に心を傾け寄り添うことができて、「良医」になれるのではないかと思った。(コケ)

(『東京保険医新聞』2017年6月25日号掲載)

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