経済財政諮問会議の「改革工程表」――骨太の方針2015と財政審建議を具体化 さらなる「医療改悪」狙う

公開日 2016年04月25日

今次診療報酬改定は2015年6月に閣議決定された「骨太の方針2015」に基づき、社会保障費を毎年3,000億~5,000億円削減していくための手段でもある。「骨太の方針2015」とマイナス改定を要求した財政制度等審議会「建議」を受け、2015年12月24日、経済財政諮問会議は社会保障を大改悪する「経済・財政再生計画改革工程表」(以下「工程表」)を決定した。
これには大幅な国民負担増と制度改悪が盛り込まれている。医療分野では「負担と給付の適正化」等を求めるなど、今次改定もしっかり位置づけられている(表)。

政府が計画する負担増と給付抑制策(「経済・財政再生計画 改革工程表」から作成)
医療 ① 入院時の食事代一食260円を段階的に引き上げ460円に:16年4月から実施
② 紹介状なしの大病院受診で窓口負担上乗せ 初診時5,000円 再診時2,500円:16年4月実施
③ 後発医薬品価格と先発医薬品の差額を徴収:17年法案提出
④ 後期高齢者(75歳以上)の医療費窓口負担引き上げ 原則1割→2割負担化:19年度の実施めざす
⑤ 一般病床の入院時居住費(水光熱費)の負担増と患者負担化:17年に法案提出
⑥ 病床機能の再編と算定要件の強化(入院ベッドの削減・再編):16年4月実施
⑦ 高齢者(70歳以上)の高額療養費負担限度額の引き上げ:17年度の実施めざす
⑧ 「かかりつけ医」以外を受診した場合の定額負担導入:17年に法案提出
⑨ 市販類似薬(スイッチOTC)の負担増や自己負担化:17年度の実施めざす
⑩ 都道府県単位の診療報酬を設定:18年度の実施をめざす
介護 ① 介護保険利用料の原則1割→2割負担化:17年に法案提出(75歳以上は早期に方策取りまとめ)
② 介護保険利用料の負担上限額引き上げ:17年度実施めざす
③ 要介護1、2の生活援助サービスを市町村ごとの事業に移行(保険給付外し):17年に法案提出
④ 「軽度者」の福祉用具貸与などの保険給付外し:17年に法案提出
年金 ① 年金額を段階的に削減
② 年金支給開始年齢を65歳からさらに引き上げ:19年に向け検討し法案提出
生活
保護
① 生活扶助基準(各種加算・扶助)のさらなる引き下げ:18年に法案提出
② 「就労努力」を踏まえ、給付の廃止・減額を含めた対応の見直し

病床削減と在宅移行を加速

今次改定は①病床削減を目的とした地域医療構想に沿って、7対1入院料の要件厳格化に代表される病床再編・削減を推進し、②地域包括ケアシステムに沿って「入院から在宅へ」の流れを加速し、在宅医療点数をより複雑化させた。③「小児かかりつけ診療料」「認知症地域包括診療料・同診療加算」の新設など「かかりつけ医制」導入の先鞭をつけるとともに、④かかりつけ医以外の医療機関受診時に患者一部負担の定額制を導入する布石として、大病院への紹介状なし初診5,000円・再診2,500円の負担を設けるなど、今後、民間医療機関、開業医を診療報酬で誘導し、他院受診の抑制役(ゲートオープナー)を押し付けようとしている。

さらに、⑤後発医薬品の使用促進、湿布薬の枚数制限(市販類似薬の保険外しへの布石)など医療費削減を推進、⑥2018年の医療・介護同時改定へ向けて維持期リハビリ点数を減算し、「医療から介護へ」の流れをいっそう推進しようとしている。国は患者を川上(病院)から川下(在宅)へ流すための医療改悪を進めているが、その受け皿となる介護保険は「保険あって介護なし」の状況だ。

すでに実施されつつある「要支援者への介護保険サービス外し」をはじめ、今後は要介護1・2の高齢者も生活支援サービスも保険給付外とすることや、介護保険利用料の原則1割→2割負担化も狙われており、被保険者の「サービスを受給する権利」を侵害する改悪計画が続いている。

地域包括ケアシステムでは「自助・互助」が強調され、自己責任の下、患者・要介護者の家族に過重な負担が押し付けられようとしている。

7月には衆参同日選挙も取り沙汰されている。経済財政諮問会議「改革工程表」などに示された内容を広く国民に知らせて、「社会保障改悪NO」の声を広げていくことが求められている。ぜひ、協会などが取り組む署名活動にもご協力賜りたい。

(『東京保険医新聞』2016年4月25日号掲載)