成年後見制度 治療同意の取り扱い“変更なし”(足立)

公開日 2017年07月31日

170704_足立支部例会

足立支部は、7月4日に支部例会を開催し、近隣の北・葛飾区を含めた会員ら15人が参加した。成年後見制度をテーマに上木拓郎氏(アンド・ワン司法書士行政書士事務所)を講師に招いた。

2000年から運用が始まった成年後見制度。さらに2016年の通常国会では自民・公明、民進など各党の賛成多数で「成年後見制度の利用の促進に関する法律」が成立し、同年5月13日に施行された。当時は、同法の施行によって本人に代わって後見人が手術や輸血等の医療行為の同意が可能となったかのような一部報道もあった。

しかし上木氏からは、医療分野、とりわけ「医療行為に関する同意」については、新法上も「成年後見人等の事務の範囲を含め検討を加え、必要な措置を講ずる」との文言しか定めておらず、実務上の取り扱いは「成年後見人に同意権は認められていない」という従前と変わらないとの指摘があった。

政府は本年3月に閣議決定した「成年後見制度利用促進基本計画(2017~2021年度)」で、19年度中を目指して医療・介護現場等において関係者が対応する際に“参考となる考え方”の整理を行い、21年度までにそれらの周知、さらに活用状況を踏まえた対応策を実施していく考えだ。

参加者からは「独居の認知症高齢者に手術が必要な場合に、本人が固辞しているにも関わらず、ケアマネジャーから後見人のサイン(了承)で実施を打診された」や「身寄りのない独居高齢者で、将来的に成年後見制度の利用を希望した場合に、どこに相談をすれば信頼できる後見人を紹介してもらえるか」など、日常診療で遭遇した事例の紹介や質問が出た。

昨今、入院時や手術前だけでなく、外来や在宅医療の分野でも“患者の同意”を要件とする診療報酬が増えている。救急現場や終末期・緩和ケア等の場面で、成年後見制度の動向は無視できない。参加者からは今後も協会に情報収集と丁寧な情報提供を望む声が出された。

(『東京保険医新聞』2017年7月25日号掲載)