国会行動 医療制度の連続改悪やめよ

公開日 2015年02月15日

1月26日、第189通常国会が召集された。今国会には患者負担増や制度改悪を伴う医療保険制度改定案が提出される。その他、労働法制、安全保障関連の重要法案が次々と審議される見込みだ(下記参照)。

東京協会は1月29日に国会議員要請行動を行い、役員が井上信治(衆・自民)、池内さおり(衆・共産)、初鹿明博(衆・維新)、宮本徹(衆・共産)、田村智子(参・共産)各議員と面談した。その様子を紹介する。

各議員との面談では、今国会で狙われる入院時の食事代の値上げや紹介状なし大病院受診定額負担などの新たな患者負担増の中止、患者申出療養の中止、国保料値上げにつながる国保の都道府県運営の中止、感染症・ワクチン(風しん・麻しん、B型肝炎ほか)の早期対策を求めた。


今国会に提出される主な医療保険制度改定案

○入院時食事療養費等の見直し

入院時食事代の自己負担額を現行の1食260円から2016年度に360円、2018年度からは460円に段階的に引き上げ

○紹介状なし大病院受診時の定額負担導入

2016年度から紹介状なしで特定機能病院及び500床以上の病院を受診する場合、初診・再診時の定額負担を導入

○国保の都道府県単位化、財政の安定化

2018年度から都道府県が保険者として財政運営/2015年度から1,700億円、2017年度からは毎年3,400億円を支援

○高所得水準の国保組合への国庫補助見直し

2016年度から段階的に見直し、所得水準に応じて13~32%の補助率とする

○後期高齢者支援金の全面報酬割導入

被用者保険料のうち、後期高齢者支援金の総報酬割部分を現行の1/3から2015年度に1/2、2016年度に2/3に引き上げ、
2017年度には全面報酬割を実施

○後期高齢者の保険料「特例軽減」の廃止

最大9割の保険料軽減率を2017年度から本則の最大7割まで引き下げる(後期高齢者の75%に影響)

○患者申出療養(仮称)の創設

2016年度から新たな保険外併用療養の仕組みとして患者申出療養を創設、実施

○医療費適正化計画の見直し

都道府県が地域医療構想と総合的な目標(医療費水準など)を設定

○標準報酬月額の上限等の見直し

健康保険の保険料について2016年から標準報酬月額の上限を現行の121万円から139万円に引き上げ


【その他、提出予定の主な法案】

・個人情報保護法・マイナンバー法改定

個人が特定できる情報を除外した匿名化情報の利活用について、本人の同意を不要とする
(機微情報については本人の同意を必要とするが、医療情報は機微情報からは除外される見通し)

・労働基準法、派遣労働法改定

ホワイトカラーエグゼンプション(労働時間法制)、解雇の金銭解決、限定正社員の導入

・ 農協法改定法

JA全中を解体する

・周辺事態法改定

これまで除外されていた武器・弾薬の提供を含む後方地域支援活動を可能とするための法改定。
7/1集団的自衛権行使容認の閣議決定に基づく

・特定防衛調達特別措置法

特定防衛調達に関する国庫債務負担行為(年賦)を5年から10年に延長

大型防衛装備の長期・一括契約を可能にする

・防衛省設置法改定

防衛省のなかに防衛装備庁を新設
武器輸出3原則の改廃を踏まえ、防衛装備品の取得や国際共同開発、輸出を一元的に担う「防衛装備庁」(仮称)を発足させる

井上 信治 衆院議員(自民・内閣委員長)

井上 信治 衆院議員(自民・内閣委員長)

井上信治衆院議員(左) 協会の要望に対して「消費税の損税を医療機関が負担するのは筋違い。10%増税時に抜本的に見直しが必要」、「患者申出療養は混合診療解禁の要。しかし、安全性の担保の意味では、疑問だ」、「国保の都道府県化は国保の運営に困っている自治体を救うための措置だ。要請を受け、保険料値上げにならない配慮が必要と理解した」と述べた。

池内 さおり 衆院議員(共産・内閣委)

池内 さおり 衆院議員(共産・内閣委)

池内さおり衆院議員(右) 今回の選挙で初当選した池内議員は、協会の要望に聞き入った。 「総選挙は東京12区(北区と足立区の一部)で戦った。北区では開設予定の特養ホームの法人が撤退する騒動があったが、今回の介護報酬マイナス2.7%では、必要な介護サービスを提供できないことの現れではないか。都民の暮らしを守るために力を尽くしたい」と語った。

初鹿 明博 衆院議員(維新・文科委、原子力委)

初鹿 明博 衆院議員(維新・文科委、原子力委)

初鹿明博衆院議員(中央) 風しん・麻しん対策の充実を求めると、議員は「成人接種費用助成は抗体検査で陰性の人(主に女性)が対象だが、検査せずとも接種すべきだ。また高い自己負担では接種は広がらない」と応じた。

患者申出療養による混合診療拡大には「保険外治療が増える分、民間保険は潤うが、契約者が保険内容を完全に理解しているわけではない。必ずトラブルが発生する。維新の党のマニフェストは混合診療の原則解禁を謳い、福祉分野には何も言及していない状況。党内の医療福祉調査会の事務局長として公的保険の充実の声を広げたい」と述べた。

宮本 徹 衆院議員(共産・財務委、決算委)

宮本 徹 衆院議員(共産・財務委、決算委)

宮本徹衆院議員(右) 東京比例区で初当選した宮本議員は「総選挙で共産党は21議席を獲得し、質問時間が倍以上になった。特に小選挙区の沖縄1区で赤嶺議員が当選したことは大きい。赤嶺議員以外の沖縄議員は党規模が小さく、質問の機会が与えられない。オール沖縄の声を代弁していかなければならない」と述べた。

消費税損税の問題では「財務金融委員として、2月上旬~3月上旬にかけて税制改正の審議にかかわる。医療分野での消費税問題についてデータをいただきながら頑張りたい」と話した。

田村 智子 参院議員(共産・文科委、決算委)

田村 智子 参院議員(共産・文科委、決算委)

田村智子参院議員(左) 田村議員は「国保の都道府県化は自治体一般会計からの法定外繰入をやめさせ、保険料を値上げするためのものだ」と批判。安倍政権について「社会保障関係費は自然増で毎年約8,000億円ずつ増えるはずだが、2013年度決算では、2012年度からの増加額はたったの5百億円。一方で公共事業は2.1兆円の増加(38%増)、東日本大震災復興予算の執行率は60%ほど。安倍政権は国民をないがしろにしている」と指摘した。

また、当日は上記の予定面談の他に山本太郎参院議員とも面談。要請内容を30分にわたって議員に説明し、懇談した。協会は、2月19日にも国会行動を予定している。

(『東京保険医新聞』2015年2月15日号掲載)