内服薬の多剤投与制限アンケート 7割が内服7種類以上の患者かかえる ――多剤投与の逓減・制限を撤廃せよ

公開日 2013年11月25日

現行の点数表では、入院外内服薬投薬数が「7種類以上の場合」、薬剤料は90%に逓減され、さらに処方せん料は68点が40点に、院内処方の場合の処方料も42点が29点に減額される点数が設定されている。こうした内服薬処方の種類数によりペナルティを設けるような点数設定に対し協会はかねてより、医学的にも根拠はなく、むしろ「保険でよい医療」を行うことを阻害するものとして改善を主張してきた。

東京協会会員を対象にした「内服薬7種類以上の投薬に関するアンケート」の回答者内訳は、病院3.6%、診療所94.7%(不明4件)。標榜科(病院・診療所含む)では、内科系67.9%、外科系38.1%。アンケート結果は保団連に送付し、他の協会で実施した同様のアンケートの集約結果ともあわせ、厚労省交渉に活用するなど今後の診療報酬改善運動の貴重な資料とする。

調査期間/2013年7月9日~7月31日、対象者/協会会員の病院・診療所4,439人、回収数/417人、回収率/9.4%

内科8割「7種以上の投薬が必要」――病状悪化・複数科受診を懸念

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まず2013年5月分の実績として、「どうしても7種類以上の内服薬を投薬・処方せざるを得ない患者がいるか」と質問したところ、「いる」との回答が72.9%、「いない」が26.4%となった(図1)。

また、内科系、外科系でクロス集計したところ、内科系では「いる」との回答が73.5%と、「いない」との回答12.4%を大幅に上回った(図2)。一方、外科系では「いる」39.0%、「いない」49.1%との数字となった。

さらに、内科系医師で7種類以上の内服薬の投薬が必要な患者が「いる」と答えた回答者(208人)に対し「何人の患者がいるか」と聞いたところ、1~9人が一番多く26.3%、次いで10~19人が16.9%、50~59人が8.1%、20~29人が7.5%と続き、19人までの回答が内科系のうち43.1%を占めている。

そして「7種類以上の内服薬の投薬が必要な患者の薬剤を7種類以下に制限した場合、どうなると思うか」と聞いたところ、回答の中で多かったものが「病状の悪化が懸念され、主治医としての責任が果せなくなる」「複数の医療機関を受診せざるを得なくなり、医療費がかさむことになる」といったもの。その他「なぜ7種類なのか」という制度の根本に対する疑問も出された。

400を超える自由解答欄からは「種類数を減らそうにも簡単には減らせられない」という医療現場の実態が明らかになった。

7割以上が減額・薬剤料の逓減に苦慮

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「7種類以上の内服薬投与の必要性に疑義があり、薬剤を減らせると思われる患者に処方せん料の減額、院内処方の薬剤料が90%に逓減される(院外処方の場合は処方せん料が40点。以下同じ)等の話をしたことがあるか」との問に対し、「そんな対応はしていない」との回答は75.9%、「対応したことがある」14.7%を大幅に上回った(図3)。

内科系医師について見てみると、「対応はしていない」との回答が77.0%、「対応したことがある」は17.7%となった(図4)。

また、7種類以上の内服薬の投薬が必要な患者が「いる」と答えた内科系医師208人にクロス集計したところ、「対応はしていない」との回答が79.3%とさらにその割合が増え、「対応したことがある」は16.8%となった(図5)。また、外科系医師では「対応はしていない」が75.5%、「対応したことがある」は6.3%にとどまった。

このように内科系、外科系を問わず、7種類以上の内服薬を投薬・処方せざるを得ない患者が「いる」と回答した医師は、薬剤料90%の逓減や処方せん料の減額という算定制限のため、患者への対応に苦慮する姿が浮き彫りになった。

全体の75%・内科系では9割が逓減・減額ルールに反対

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さらに、7種類以上内服薬投与の「逓減」(薬剤料×90%等)、「減額」(処方せん料、処方料)について「賛成」か「反対」かを聞いたところ、「反対」は77.4%と、「賛成」15.8%を大きく上回った(図6)。

これを「内科系」に限ってみると、「反対」は87.2%と9割に近く、「賛成」2.8%を大きく上回った(図7)。「外科系」では、「反対」は63.3%。「賛成」は7%となった。

さらに「反対」と答えた会員(323人)にその理由を選択制(複数選択可)で聞いたところ、1位と2位はほぼ同数で、1位が「糖尿病、高血圧症等、1種類の投薬ではすまない疾病もあるから」85.4%、2位は「診療所、中小病院は外来で多数の慢性疾患などを診る必要があるから」が84.8%、以下「逆に多剤投与が必要な患者の併用禁忌、副作用等の管理の技術的評価が必要と思うから」34.1%、「薬価差が縮小し、薬価差益を念頭にした多剤投与はありえないから」32.2%、「近隣に他医療機関、調剤薬局がなく、多剤投与せざるを得ないから」6.5%、と続く(図8)。

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根拠ない逓減・減額ルールの早期撤廃を

地域の開業医や中小病院の勤務医は「かかりつけ医」として総合的な診療機能を担う。慢性期の患者を地域で診察しながら、時間外対応や往診対応も行い、患者にとっても自分のことを誰よりもよく知っている最も身近な「かかりつけ医」に受診した方がより安心であることはいうまでもない。多剤投与による慢性疾患の管理の必要性はこうした状況の中から避けられないものとして生まれてきたといえる。複数の疾病を有する患者を診察・診療することは、開業医にとってごく日常のことであり、多剤投与による慢性疾患の管理もまた避けられない。

協会ではこうした係りつけ医療の現場をふまえ、これらのアンケート結果から、「1処方につき7種類以上の内服薬の投薬を行った場合、90/100に逓減する」取扱いを2014年度診療報酬改定で撤廃することが必要であると考え、5月7日に要望書を提出した。

また、「7種類以上の内服薬の投薬を行った場合、13点低い処方料、28点低い処方せん料」を算定する取扱いを廃止し、少なくとも「F100処方料」を42点に、「F400処方せん料」を68点に統一する必要があると求めるものである。

(『東京保険医新聞』2013年11月25日号掲載)