在宅シンポジウムを開催 現場の課題を交流

公開日 2017年11月09日

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認知症、緩和ケア、終末期の実践学ぶ

協会研究部は10月1日、中央講習会「在宅医療シンポジウム」を開催した。高齢者人口がピークを迎える2025年を見据えて、国が推し進める「入院から在宅へ」の流れのなかで、今後在宅医療の果たす役割や問題点について、先進的に在宅医療を実践する3人の医師から報告があった。

シンポジストは(1)中村洋一氏(中野区・中村診療所院長「増加する認知症患者の在宅医療にどう取り組むか」)、(2)武藤真祐氏(文京区・祐ホームクリニック院長「東京、石巻、シンガポールでの在宅医療とICTシステムの開発・展開」)、(3)吉澤明孝氏(豊島区・要町ホームケアクリニック院長「癌末期患者が自宅で過ごすためには~緩和ケアと病診連携」)の3氏。医師、歯科医師、看護師、ケアマネジャーなど62人が参加した。

171001_在宅シンポジウム(会場)

現場の医師たちからの報告を受け、フロアーからも現在抱えている在宅医療の課題、今後の在宅医療のあり方などについて活発な意見交換が行われた。

参加者からは「他の在宅診療所の実践について知る機会が少ないので非常に勉強になった」「在宅認知症患者が抱える課題、終末期の取り組み方、緩和ケアの目標、医療連携等とても興味深く解りやすい話だった。在宅医療を充実させる取組みに大変心強く感じた」「現場から生の声が聴けて良かった。実際のディスカッションを通じてより理解が深まった」など大変好評で、次回開催を希望する声も多かった。

171001_在宅シンポジウム(竹崎先生)

「在宅医療の今後の在り方や進め方に多くの示唆をもらえた」

東京保険医協会 理事 竹﨑 三立

在宅医療のシンポジウムは協会としては初めての取り組みであった。

中村洋一医師のテーマは癌や急性心疾患・脳血管疾患などを生き延びて高齢化した患者さんのフレイルによる転倒・骨折に対する対応や食べない認知症患者さんへの終末期対応についてであった。武藤真祐医師のテーマは多くの地域で展開されているICTシステムの現状と将来展望について貴重な実践内容の報告であった。吉澤明孝医師のテーマは比較的若い層の患者さんが多い癌による疼痛対策や在宅緩和ケアのポイント、病診連携の進め方についてであった。

今後の在宅医療は超高齢化するなかでの高齢者患者への対応が多くなり、比較的若い層の亜急性期・慢性期の癌や脳血管疾患患者への対応や障害者・難病疾患・小児疾患等の多方面への対応も求められてくる。在宅医療へのICTシステム導入も家族介護の現状や介護補助者の係わり方や患者の経済状態・認知機能状態によってその導入に格差が生じてくるなかで、いかに発展させて行くかを考えさせられた課題であった。

在宅医療の今後の在り方や進め方に多くの示唆を貰えたシンポジウムであった。また、今回多くの在宅医療での多職種の参加があった。今後も在宅医療をテーマにしたシンポジウムを企画し医師・歯科医師・ケアマネジャー・看護師・介護士等多くの職種の方々とも連携・学習を広げてゆきたい。

 (『東京保険医新聞』2017年10月25日号掲載)