2018年度診療報酬改定 マイナス方針の暴挙

公開日 2017年11月27日

10月25日、財務省の財政制度等審議会(財政審)は2018年度の診療報酬改定で、2%以上のマイナス改定を求めた。過去10年間の国民医療費の伸び率年平均2.5%のうち、高齢化等の影響が1.2%だとして、医療費の伸び率を高齢化の範囲内に抑えるためには一回の改定あたり「2%台半ば以上のマイナス改定が必要」という理由だ。

日本の医療費の主な増加要因は、高齢化と医学・医療の「進歩」だといわれている。医療費の伸び率を高齢化の範囲内とする方針をごり押しすると、国民は、公的医療保険で医学・医療の「進歩」の恩恵を受けられなくなってしまう。これでは、最新の医療は「混合診療」でということになる。

財政審は、保険料のさらなる上昇を防ぐとともに、90年代以降、低迷してきた賃金や物価の水準に比べ医療費の伸び率は高く、これを是正するためにも、マイナス改定が必要だとしている。しかし、これは本末転倒の論議だ。保険料の上昇は、医療保険制度への国庫支出を大幅に削減し、医療費の増加が保険料に直接反映する仕組みにしてきたからであり、この間の賃金・物価の低迷は、経済政策の失敗によるもので、医療費の上昇とは全く関係のない事柄である。

協会で取り組んでいるプラス改定を求める会員署名には「医療機関を維持していくのがやっとの状況だ」「安心、安全な医療提供には相応の診療報酬が必要」といった声が数多く寄せられている。診療報酬は医療機関を運営するための原資であるとともに、なによりも、患者が受ける医療内容を保障するものだ。マイナス改定は国民の命と健康を危うくすることに直結する。

財政審が求めるマイナス改定という暴挙を跳ね返していかなくてはならない。

<<財政審が求めるマイナス改定の中身>>財政制度等審議会財政制度分科会 2018/10/25資料から作成

改定率の考え方

診療報酬本体の水準は、賃金や物価の水準と比べて高い水準であり、国?負担の抑制や制度の持続可能性の観点から、診療報酬本体のマイナス改定により、これを是正する
診療報酬改定がマイナスでも、診療報酬総額は増加するため、医療機関の増収は確保される
国民医療費は過去10年で平均2.5%/年で増加。そのうち高齢化等による増加は1.2%/年である
医療費の伸びを「高齢化等」の範囲内とするためには、診療報酬改定1回あたり2%台半ば以上のマイナス改定が必要である
保険料率の更なる引上げに繋がらない様に、少なくともこの程度のマイナス改定とすることが必要である

2018年度診療報酬等の課題

▼病床機能の再編と算定要件の強化

・入院基本料算定要件(7:1)の厳格化
・看護職員配置ではなく、医療機能(高度急性期、急性期、回復期等)による評価
・慢性期病床再編、療養病床及び介護医療院の報酬水準、算定要件の設定

▼診療科ごとの不均衡是正 

・診療所に従事する外科や産婦人科などの医師数が減少するなか、皮膚科、眼科などの医師数が増加しており、医師数の増加が診療科偏在の是正につながっていない。また、これらの診療科は損益率等も高い。こうした診療報酬における配分により、診療科偏在を助長しかねない

▼調剤料引き下げ

・調剤報酬全体の水準を引き下げる
・投与日数や剤数に応じて業務コストが比例増することを前提にした調剤料の仕組みを見直す
・後発医薬品調剤体制加算の基準引き上げ

▼市場価格を反映した薬価改定

経済・財政再生計画「改革工程表」の着実な実施

外来時の定額負担
・「紹介状なし大病院受診の定額負担」は上乗せ収入とせず、診療報酬のなかで定額負担とする(2017年末までに結論)
・かかりつけ医以外の受診に定額負担の導入を検討

薬剤自己負担の引き上げ
・薬剤の種類に応じた保険償還率の設定や、一定額までの全額自己負担などを、速やかに検討、実施(2018年度末まで)

後発品の平均価格との差額を自己負担化
・2017年央の後発品の数量シェア目標の進捗評価時期を目途に結論

金融資産等を考慮に入れた負担を医療保険にも適用
・入院時生活療養費等の負担能力の判定にも、介護保険の補足給付と同様の仕組みを導入
・医療・介護保険について、マイナンバーの活用で、所得・金融資産等の負担能力を判定する具体的な制度設計の検討を推進(2018年度末まで)

医療費適正化に向けた地域別の診療報酬の設定
・地域別診療報酬の活用を次期診療報酬改定で検討

後期高齢者の窓口負担引き上げ
・後期高齢者(75歳以上)の自己負担2割化の検討・結論(2018年度末まで)

(『東京保険医新聞』2017年11月15日号掲載)