【要望書】オンライン診察・医学管理料保険収載に係る十分な審議を求める要望書

公開日 2017年12月25日

 2017年12月25日

厚生労働大臣 加藤 勝信 殿
厚生労働省 保険局医療課長 迫井 正深 殿

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KDX新宿ビル4階
東京保険医協会  会長  鶴田 幸男
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2018年診療報酬改定でのオンライン診察・医学管理料(遠隔診療)の保険収載について、中医協での十分な審議を行うよう要望します

 貴職におかれては、国民医療の向上に日夜尽力されておられることに敬意を表します。

 さて、中央社会保険医療協議会(以下、中医協)では、本年11月および12月に「情報通信機器を用いた診察及び医学管理」として、▽「遠隔」再診料の新設、▽「遠隔」医学管理料の新設および▽情報通信機器、診療環境、その他の要件設定のあり方等に係る審議が行われました。診療側・支払側とも保険点数項目の新設に異論はなく、遠隔診療に特化した再診料等の新設が具体化される方向です。
 しかし、実際の医療現場で日常多くの患者と接し、疾病の管理を行っている私たち医療者は、オンライン(遠隔)で患者を診察し、疾病の管理を行うことに多くの懸念を抱かざるを得ません。例えば、①画面鮮明度等を含む情報通信機器の水準、②緊急時対応等の医療安全管理、③患者の個人情報保護、④医療事故等が発生した場合の責任の所在の担保、⑤オンライン診察に対する医学的エビデンスに基づく検討の不足等の課題が挙げられ、これらについて中医協で十分に審議されたとはいえない状況です。

 私たちは、情報通信機器を用いた診察および医学管理を全て否定するわけではありませんが、医療の本質は、患者と医師が「対面診療」を積み重ねていくなかで身体的および精神的状況への理解が深まり、有効な治療へとつながっていくものだと考えています。

 したがって、患者の利便性ばかりが強調され、安全性や責任の所在の担保等の議論がされないまま、医療費削減と医療の営利市場化を目的とするような「情報通信機器を用いた診察及び医学管理」の推進は見直すべきです。またエビデンスに基づいた一定のルールなしに、遠隔での診療を拡大することは都市部の医療機関への受診の集中を招き、地域医療の充実に逆行するとの指摘も出ており、オンライン診察・医学管理料(遠隔診療)の診療報酬への評価は慎重に行われるべきであると考えます。

 貴職におかれては、オンライン診察・医学管理料(遠隔診療)について2018年4月実施の診療報酬改定での拙速な保険収載を再考し、引き続き中医協で十分な審議を行うよう、下記の通り要望致します。

要望項目

1.2018年4月実施の診療報酬改定でのオンライン診察・医学管理料(遠隔診療)に係る拙速な保険収載は再考し、現在策定中のガイドラインも含めて、引き続き中医協で慎重に審議してください。

2.12月1日開催の中医協にオンライン診察・医学管理料(遠隔診療)を保険収載した場合の資料が提示されました。その中で特に医学管理に係る評価として、特定疾患療養管理料をはじめとした診療報酬上の8つの医学管理料が例示として取り上げられているものの、算定の対象となる疾病が示されていません。保険収載するのであれば、算定対象となる疾病についても指定すべきであると考えます。今後開催される中医協へ具体的に明示してください。

3.オンライン診察・医学管理料(遠隔診療)を保険収載するにあたり、「安全性や有効性のエビデンスが確認されている」ことが要件として示されています。ここに明記されているエビデンスとは具体的に何を指すのか、明確にしてください。また限定した診療行為に対するオンライン診療を保険収載した場合は、期限を設けて、対面診療と比較しての有効性の検証を必ず行ってください。 

以 上

▽PDF版
171225【要望書】オンライン診察・医学管理料保険収載に係る十分な審議を求める要望書[PDF:71KB]