保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

奈良県医師勾留中死亡事件について検証―取り調べの正当性を問う

公開日 2018年06月21日

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協会勤務医委員会は4月14日、奈良県勾留中医師死亡事件について検証する学習会を協会セミナールームで開催し、49人が参加した。
「奈良県勾留中医師死亡事件」は、奈良県の病院で肝臓手術を受けた患者が死亡したことを受け、2010年2月6日に業務上過失致死の疑いで逮捕された男性医師が勾留中に意識不明となり急死した事件。
協会は、奈良地裁での請求の棄却後、遺族の高裁への控訴を受けて2017年4月に「勾留中医師死亡事件の真相究明を求める」理事会声明を発表した。昨年12月、高裁でも棄却の判決が出されたが、遺族は最高裁判所に上告中である。
男性医師の死因については、奈良県立医科大学では「急性心筋梗塞と考えるのが妥当である」旨の鑑定が行われたが、「遺体に多くみられた創傷についての評価が不十分で、創傷と死因との因果関係を否定できない」との意見書(福島県立医科大学法医学講座/黒田教授)も提出されている。
留置業務管理の過失等について、遺族が奈良県に対して起こした民事訴訟一審で意見書を提出した岩手医科大学法医学講座教授の出羽厚二氏は、本講演のなかで、奈良県立医科大学が検察庁に提出した鑑定書には記述があるが、遺族に渡された解剖記録には記載されていない内容もあり、他にも不可解な点が多数あることを指摘。また、「遺族が男性医師の死因の解明について、強い決意を持っている」と語った。
続いて、堺若葉会病院の喜田裕也氏が「腎臓を専門とする臨床医の立場から、死因は急性心筋梗塞ではなく、脱水と横紋筋融解症による急性腎障害が考えられる」「男性医師の死亡は留置管理に過失があり、逮捕後、死亡までの期間に暴行を受けていた可能性がある」と発言した。
参加者からは、「警察や検察の取り調べの正当性」を問題視する意見が相次いだ。司会の佐藤一樹協会理事は自身の経験から「検察官の仕事は20日間の勾留期間中に調書をつくり、起訴すること」だと述べ、勾留中に相当な精神的、肉体的圧迫があったのではないかと指摘した。
鶴田会長は「この事件は警察や検察の取り調べ中に基本的人権を著しく侵害する行為が実際にあったか否かが争われるべきだ。協会は今後も真相究明を求めていく」とあいさつし、閉会した。

(『東京保険医新聞』2018年4月25日号掲載)