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【パブリックコメント】地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令案に関する御意見の募集ついて

公開日 2018年06月29日

2018年6月25日

厚生労働省
老健局介護保険計画課企画法令係 御中

地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令案に関する御意見の募集ついて

東京保険医協会 政策調査部長 須田 昭夫
地域医療部長 森本 玄始

日頃より国民の命と健康を守るため、ご尽力くださっていることに敬意を表します。
地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令案に関する意見募集について、下記の通り意見を提出いたします。

2.改正の内容について

【意見】
介護保険制度について、特に所得の高いものについて利用者負担を3割にすることはやめてください。

【理由】

一.
介護保険制度の信頼性が失われています。制度の発足時、わずかな負担で老後は安心と宣伝されました。利用時の自己負担は1割でしたが、一定所得以上の者は2割負担になり、今度は3割になろうとしています。介護保険料は制度発足時の2倍にもなっており、給付の削減も進んでいます。

要支援者に対する生活支援は、介護保険によるサービスから切り離されました。要介護1・2の人は、原則的に特別養護老人ホームに入所できなくなりました。要介護3になっても、施設が不足しているために、すぐには入所できません。介護保険があっても利用できない、介護が受けられないと言われています。保険料を支払ってきたのに、いざとなったら利用できない、利用者負担の額が増えるというのでは、介護保険詐欺と言われても仕方がありません。このような状況で利用者負担を3割にすることには正当性がありません。

二.
2000年の介護保険制度発足以来、介護サービス利用の自己負担は1割でした。2015年8月からは一定所得以上の利用者は、利用者負担が2割に増額されています。このとき同時に、特養ホームなどの食費・居住費補助(補足給付)が削減されたために、「1カ月の負担が5万円から10万円になった」「生活が成り立たない」などの声があがっていました。負担は限界を超えています。ところが今度は所得に関わらず、65歳以上の利用者負担を「原則2割」に引き上げることなどが検討されています。一定以上所得者の自己負担3割化と併せれば、大幅な受給抑制策になると考えられます。介護の社会化に逆行する自己負担増は、やめてください。

三.
資本主義社会では自由競争の結果、経済的な豊かさには、格差が生まれがちです。しかしどんな境遇にあっても、人間として生きるに値する生活は、保障されなければなりません。そのために必要な費用は、負担能力に応じた税によって集めることになります。経済的に豊かな人は能力に応じた税を支払うことによって、社会に対する義務を果たします。ところが社会に必要な費用を支払い、義務を果たしてきた人自身が治療や介護を必要とするようになった時に追加の費用を徴収するのは、二重取りではありませんか。社会が必要とする費用は、法人を含めて正しく所得税の累進課税をすることによって、一元的に集めてください。そして、所得税を正しく納めている一定以上所得者の、利用者負担をふやすような愚挙はやめてください。

四.
医療や介護は、贅沢や我儘で受けるものではありません。豪華な病室や有料老人ホームのサービスには、特別料金があっても良いでしょうし、所得の少ない人には保険料や利用者負担の免除や減額があるべきでしょう。しかし公的給付のための税金や保険料を、すでに支払ってきた人たちに対して、所得によって利用者負担に差をつけるのは不当です。

医療や介護は多くの先進諸国で無料か、きわめて低額の負担で行われています。日本では自己負担割合が高くなっていますが、家族や個人の所得を詳細に調べたうえで、負担割合を決定し、通知、適用、徴収などをするための人件費、設備費、消耗品費、通信費など、どれだけ多くの費用がかかっているか、調べてみてください。コストパフォーマンスがとても悪いと考えられます。無駄な出費は、税や費用を負担する国民への背信行為ではないでしょうか。保険料を支払ってきた人から、3割もの利用者負担を徴収するのはやめてください。

五.
大企業の法人税はどんどん引き下げられてきました。大企業には数々の補助金が交付されています。大企業には輸出した製品にかかわる消費税まで還付されています。還付の原資は国民が支払った消費税です。それに引き換え、給与所得者には負担感が大きい消費税を、国民のほとんどすべての生活費支出等から徴収しています。その消費税収の総額は国税収入の20%にも及びます。社会保障のためと言っていますが消費税の累積総額は、消費税導入以来実施されてきた法人減税の総額とほぼ同額です。法人減税をしなければ、消費税は必要なかったわけです。

法人が支払った消費税は、売り上げに加算して受け取る消費税と通算されるので、法人はほとんど消費税を負担しません。消費税は最終消費者が負担しています。「一定以上の所得がある人」に該当する人たちのほとんどは、消費税を最も負担に感じながら負担してきた人たちです。介護が必要になってから口実を付けて、3割もの利用者負担を徴収するのは、人道にもとります。介護の費用は元気な大企業から徴収し、引き下げられてきた法人税率を元に戻してください。

六.
日本国政府は社会保障費を削って防衛費にまわし、米国と一体となって海外で武力行使できる体制を整備しています。医療と介護への予算を増やして、戦争する国づくりはやめてください。

日本国憲法は、基本的人権の尊重を定めています。社会保障は国民に対する国家の義務とされています。日本でも生存権の保障は、国家の責任で行うとされてきました。ところが、2013年の社会保障改革国民会議報告書では、社会保険を「自助を共同化した仕組み」とまで言い切り、同年12月に成立したプログラム法にも「負担なければ給付なし」という、国家の責任を放棄する言葉が明記されました。これは社会保障の理念の改ざんであり許されません。

七.
社会保険に国や企業の負担があるのは、社会全体で基本的人権を守るという、社会保障の原理が働いているからです。病気や障害、高齢などにより社会的弱者になった人たちは、社会保障給付の対象であり、安心して社会保障サービスを受けられなければなりません。

しかしいま、医療と介護の提供体制が変えられようとしています。政府は「地域医療構想」によって病床数をへらし、在宅患者への介護を削減し、「医療費適正化計画」で医療費抑制を計画しています。約27万床の医療療養病床を半減させ、在宅死への誘導が行われていますが、きわめて困難な事業だということがわかってきました。低額な費用で在宅看取りをする計画には、限界があります。介護事業の総費用が膨らんでいますが、低賃金と過重労働により、介護従事者の離職率が高くなっています。単身者や介護の必要度の高い人たちは、在宅で苦しい生活をしています。一部の人たちの自己負担を2割、3割と高め続けるのではなく、制度全体の見直しが必要な時期に来ています。

八.
厚生労働省「国民生活基礎調査」から推計すると、65歳以上の高齢者の27%は生活保護基準以下の収入で生活しています。高齢者の年金収入月額は、夫婦世帯で約19万円、単身世帯なら約11万円で、毎月の家計収支はそれぞれ約5.5万円、約3.6万円の不足です。

さらに75歳以上の高齢者の86%は、何らかの慢性疾患の治療中です。そのような中で、70歳から医療費の自己負担が、段階的に2割に引き上げられ、8月からは高額療養費制度の負担上限も引き上げられます。4月からは入院時の食事代と居住費負担も引き上げられましたが、この費用は高額療養費の計算からは除外され、全額が家計の負担になっています。

年金が減少してゆく高齢者世代は収入が少なく、医療・介護への支出が増加し、蓄えがあっても取り崩してゆく世代です。これ以上の医療と介護の負担増はやめてください。

以上

180625【パブコメ】地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令案に関する意見募集[PDF:231KB]

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