保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

新生児の聴覚スクリーニング検査―東京都 2019年度に公費助成目指す

公開日 2018年07月12日

限られた医療資源

下表のように、都内ではすでに立川市、小金井市、さらに2017年度から町田市と檜原村が先行して独自の公費助成を導入している。しかし、地域によって分娩施設も限られており、さらに出生児に聴覚検査も実施するとなると体制整備には課題も多い。

表 東京都内の「新生児聴覚検査」の費用助成(2018年度)
  立川市 小金井市 町田市 檜原村
主な対象児 生後1カ月以内
(※1)
生後3カ月まで 生後1カ月未満 生後28日以内
(※2)
助成金額 3,000円 助成 全額公費助成 3,000円 助成 5,000円 助成
指定医療機関数 4施設 1施設 27施設
(市内は4施設)

(※3)
指定医療機関以外で受けた費用の償還払い有無
(3,000円上限)
×
(3,000円上限)

(5,000円上限)
※1:やむを得ない理由がある場合は、概ね生後50日以内であれば助成(立川市)
※2:特別な事情があると認められる場合は生後6カ月までに実施したものは助成(檜原村)
※3:指定医療機関を設けず、全国いずれの医療機関で受けた検査であっても助成対象となる。全て償還払い。

4市村のうち、「小金井市」では市内1施設(桜町病院の小児科外来)で一括して検査を引き受ける。同病院で検査を受けた際は保護者の費用負担はないが、その他の施設で受けた場合は、そもそも助成が受けられない。


反対に「檜原村」の助成方式はすべて“償還払い”で、村内に指定施設を設けず、全国いずれの医療機関で受けた検査であっても、いったん保護者が検査費用を負担し、領収証等の申請書類を村に提出して5,000円を上限に払い戻しが受けられる。どちらの自治体も地域の実情と、限られた医療資源を勘案したなかで導入された制度だ。

母親の里帰り出産等への配慮も

2年間のモデル事業を経て、2006年度から制度を導入してきた「立川市」と、2017年度から導入した「町田市」では、指定医療機関で検査を受けた場合は、医療機関の窓口で市からの助成額3,000円を超えた金額を支払う方式だ。特に「町田市」では市内4施設に加えて、隣接する稲城市や多摩市、さらに相模原市、大和市、横浜市、川崎市、座間市、厚木市、藤沢市など神奈川県にも指定医療機関がある。

また両市とも、指定医療機関以外(市外を含む)で受けた検査費用の“償還払い”も行っている(前述の「檜原村」も同様)。立川市を例に見ると、毎年約1,500人程度の出生児のうち、市内で生まれる児は“半数程度”で、残る700人程度は市外での出産 である(第1回検討会報告)。母親が市外に里帰り出産等をした際の貴重な救済策といえる。

「他院で出生した児への検査依頼」も課題

第1回の検討会で指摘された課題の一つが、他院で出生した児への聴覚検査の実施だ。出産前から自院で妊婦健診等を担当してきた出生児であれば、医療機関としても母子ともに経過等も一定把握ができる。しかし他院で出生した児の場合は、出産までの経過や、新生児の状態などが不明のため、前述の3市の指定医療機関でも、“飛び込み”の検査希望に対しては対応困難とする施設もある。「町田市」の場合も、市外も含めたすべての指定医療機関は原則、その医療機関で出生した児への聴覚検査を実施する。

早期発見、早期療育につなげるために

聴覚障害は子どもの将来にわたって大きな影響を及ぼす。早期に発見し、適切な支援が受けられれば、音声言語の獲得や日常生活を過ごすうえで、障害の程度を軽減することが期待される。

厚生労働省の新生児の聴覚検査に関する通知では、分娩施設において初回のスクリーニング検査を実施する場合は「おおむね生後3日以内」、さらに要再検で確認検査を実施する場合は「概ね生後1週間以内」を掲げている。分娩施設で検査を実施できない場合も、連携により「退院後、可能な限り早期」に検査を受けられることも目指す。

しかし、当該事業を進めていくうえで財源確保も容易ではない。必要な検査機器の整備、検査担当者の配置、さらに医療機関同士の連携体制も構築しなければならない。かつて区市町村の「新生児聴覚検査事業」に対して行われていた国庫補助は、2007年4月からは地方交付税による措置となった。地方交付税は、自治体間の財源の不均衡の調整を目的とする仕組みであり、“裕福な自治体”には交付されない(いわゆる「不交付団体」)。

全国の都道府県では唯一、東京都だけが長らく「不交付団体」であり、また23区および2017年度は10市町(立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、調布市、小金井市、国分寺市、国立市、多摩市、瑞穂町)も同じく「不交付団体」とされている。これらの自治体では、「新生児聴覚検査事業」に必要な財源は国からの国庫補助が受けられず、独自に捻出しなければならない。

今後の東京都における検討会の動向に注目するとともに、必要に応じて国や東京都に対して十分な財政支援を行うよう、医療現場から声を上げていきたい。

(『東京保険医新聞』2018年7月5日号掲載)