保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

第2回在宅医療シンポジウムを開催―在宅緩和ケア医療の実践

公開日 2018年12月21日

協会研究部は9月30日に在宅医療シンポジウムを開催し、80人が参加した。国の主導する「入院から在宅へ」という流れのなかで、在宅での対応が困難な患者も増加している。今回は、「緩和ケア医療」をテーマに、在宅で緩和ケアに取り組む医師、看護師がその実践と課題を語った。
(写真は、左から吉澤明孝氏(要町病院・豊島区)、宮地敦子氏(宮地内科医院・中野区)、鈴木悦子氏(要訪問看護ステーション・豊島区)、村崎佳代子氏(本町訪問看護ステーション・豊島区))

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在宅緩和ケアにおけるオピオイド使用のポイント~臨床上のコツと注意点~

吉澤明孝氏(要町病院・豊島区)は、在宅緩和ケアにおけるオピオイド製剤の使用法を報告した。

それぞれの特徴として、モルヒネは呼吸困難に対して日本のガイドラインでは唯一有効で薬剤相互作用が少ないが、腎障害患者には使用しにくい。オキシコドンは高容量が使用しにくい、高濃度製剤がない、薬剤相互作用がある。フェンタニールは呼吸抑制変化が急速にでることがある。薬剤相互作用がある。また呼吸困難に効きにくい。ヒドロモルフォンは呼吸困難患者に有効であり、代謝産物が微量であり腎障害患者に使用が可能であり、薬剤相互作用が少ないが、診療報酬のルールでは在宅医療での使用が認められていない。
症例では、間質性肺炎と心不全のある60代患者に、モルヒネ塩酸塩を使用することによって食事も普通にとれ、外出・外食も家族とできるようになった。亡くなる直前まで家族と食事がとれて、最後は家族が見守る中で苦しむことなく旅立った。COPD・肺性心などがある80代患者が心不全で呼吸困難、意識低下となったが、ナルベインを処方することで翌日には症状が軽減したことなどを紹介した。

緩和医療におけるオピオイド鎮痛剤の使用のポイントは、緩和医療におけるオピオイド鎮痛剤使用に関するWHO5原則など基本的な原則を十分に理解する。それぞれのオピオイド鎮痛剤の特徴を理解し患者にあったオピオイド鎮痛剤を選択すること。そして、鎮痛補助剤など多剤と併用することにより症状緩和をより良くすることができるので、オピオイド鎮痛剤以外の併用薬剤の使用も習熟する必要がある、とまとめた。

中野区での緩和ケア連携~医療系学生を交えた多職種連携~

宮地敦子氏(宮地内科医院・中野区)は、中野区で開催したオレンジバルーンフェスタについて報告した。

オレンジバルーンフェスタとは、通りすがりの区民に対する啓発、普及活動を中心としたイベントである。オレンジバルーンフェスタの主目的は、都民に対する緩和ケアの啓発、普及活動であるが、副次目的として、イベントの運営・企画を通じ、多施設、多職種のがん医療者間の交流をはかり、真に「顔の見える関係」を構築することがある。これにより円滑な地域連携につながることが期待できる。

特に中野区の取り組みでは、医師・薬剤師・看護師・ケアマネジャー等のほか、医療系の学部を要する帝京平成大学と協力し、大学職員・学生を交えての企画・立案・実行委員会を立ち上げ、企画委員会を開催し、学生を含めた若い世代とがんや緩和ケアについて積極的に意見交換した。
その結果、企画に参加した大学生から「身近でがんになった人もいないし、身近な人の死の経験もないが、「がん」のことを勉強してみたいと思います」との言葉を聞けた。開催前よりも、明らかに顔の見える信頼できる他職種連携ができるようになったと話した。

自宅で最後まで支える~家族への心のケア~

鈴木悦子氏(要訪問看護ステーション・豊島区)は、緩和ケアの実践には、訪問看護師のあたりまえの機能(医師と連携し自律して症状緩和ができる、予測的に判断しケアを柔軟に調整する等)に加えて、患者・家族に対する心のケア(心の動揺への介入)が求められることを強調した。

自身が心がけていることとして、「患者・家族が話していることをそのまま受け止めること」「家族の性格を理解し、家族の力が向く方向性へベクトルを合わせること」「家族の力を信じること」などを挙げた。

終末期を家で過ごすために~医療介護専用SNSの有用性~

村崎佳代子氏(本町訪問看護ステーション・豊島区)は、最初に、在宅医療で利用している医療介護専用SNS(メディカルケアステーション)を紹介した。

肺がん末期の患者のケースで、主治医・訪問看護師・訪問介護事業所などが参加し、患者の状態・家族の思い等をタイムラインにそれぞれ書き込み、共有している。末期の患者は心身の状態の変化等に応じて、本人の意思は変化しうるものであり、患者がどのような生き方を望むか等を日頃から話し合うことが重要であり、話し合った内容を本人・家族等と医療・ケアチームで共有する方法として、メディカルケアステーションは有効であると話した。
その他、同ステーションで実践している終末期を支えるサービスとしてアロマセラピーやサウナ式清拭方法を紹介した。

(『東京保険医新聞』2018年10月15日号掲載)