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【視点】再生可能エネルギー電力を活用しないのはもったいない

公開日 2019年02月05日

国立研究開発法人 産業技術総合研究所  歌川 学

日本は多様で豊富な再生可能エネルギー資源(以下、再エネ)があり、現在の電力消費量の何倍もの再エネ電力の可能性がある。固定価格買取制度導入後増加したが2017年実績で再エネ電力は電力量の16%である。

九州電力は九州本島で初めて9回の太陽光・風力発電の出力抑制を行った。日本の優先給電・送電網受入は、(1)原発・水力・地熱、(2)太陽光・風力、(3)地域バイオマス、(4)その他バイオマス、(5)火力、の順になる。火力は後回しだが「最低出力」など「グレーゾーン」がある。火力の停止、その他再エネ受入を増やす対策に揚水発電利用、地域間連系線利用、需要シフト(デマンドレスポンス)などもある(注1)。これらが当日どのように行われたかを点検する。

調整日の需給・九電の行った対策

九州電力が太陽光の出力抑制を行ったのは10/13、14、20、21、11/3、4、10、11の土日、1/3(木)の9日間である。抑制量は11/4の12時の92・5万kW、次が10/21の11時の92・3万kW、10~11月計は太陽光2279万kWh、風力23万kWhである(注2)。

九州電力は10~11月の出力抑制について経済産業省審議会に報告した。特に詳しい対応を報告した10/21は、11~13時のエリア需要は約730万kW、原発出力は407万kW(4基運転)、太陽光は11時に546万kW出力のうち454万kWを送電網に受け入れ、92・3万kWの太陽光出力抑制を行った(風力抑制無)。この様子を図1に示す。また火力抑制、地域間連系線、揚水発電、一般水力、デマンドレスポンスなどの対応を表1に示す。

190205_図1 九州電力の出力調整(10/21)

 

190205_表1 九州電力の2018年10月21日の対応

今回九州電力で未実施とみられる対策に、需要側対策・デマンドレスポンスがある。現在深夜電力を使っている給湯器・各種蓄熱設備、電気自動車などの電力消費を、晴れた日は太陽光にあわせて昼間にシフトすると揚水発電などと同様の対応ができる。

出力抑制は防げたか

まず太陽光風力の出力抑制は「絶対防ぐべきか」というと必ずしもそうではない。「絶対」出力抑制しない前提で太陽光・風力の「増設を制限」すると逆に普及のさまたげになる。欧州のように太陽光風力を年間数%の範囲で出力抑制しつつ大量増設する方が再エネ割合を飛躍的に高め、単価を下げるのにつながる。ただし透明性あるルールと運用が大前提である。

次に防げたかを点検する。九州電力公表データと、取り得る対策を比較すると多くの追加対策も考えられる。火力は太陽光・風力より優先順位が後だが、太陽光92・3万kW出力抑制時に、火力は173・4kW発電していた。九州電力の低負荷期計画のように他社火力を40万kWに絞るなど、当日運用の火力発電を110万kW分下げれば太陽光を抑制せずにすんだ勘定になる。

また図1の通り夕方に太陽光出力低下に応じて火力出力を上げるため速度が遅い石炭火力は止め、速度が速く迅速に対応できるLNG火力を動かすことが望ましい。また、揚水発電利用は検査中以外の設備の設備容量より42万kW小さかった。地域間連系線は運用容量分は使って送電したが、九州電力管内の石炭火力には中国電力四国電力受電分があり地域間連系線を使用しており、この石炭火力分の発電を停止すれば地域間送電線の空き容量が増加し域外送電も追加できた(九電自身も検討)。またデマンドレスポンス、深夜電力を昼間に移動する需要シフトも技術的に可能である。

今後の注意点

当面の課題に、他電力の出力抑制がある。九州電力は火力発電の出力を他社とも交渉して5分の1に下げ、一般水力出力も半分に下げ、揚水発電や地域間連系線を7~8割使用した。今後も太陽光・風力は大きく増加、省エネで需要減、太陽光・風力の出力抑制は他社でも予想される。その際に日本型制度下の対策を今回それなりに実施した九州電力水準の対策を拡大するのが必須である。欧州では太陽光・風力の割合が日本の何倍もある国でも出力調整は年間発電量の数%である(注5)。今後、後発電力会社が九州電力水準の対策も取らずに大きな出力調整するようでは問題だろう。対策内容に注目する必要がある。

また一定規模以上の太陽光風力設備は遡って自動通信調整設備をつけ(現状は古い設備には電話連絡等)、その代わり調整実態は必ず公表する仕組みが望ましい。

出力抑制以外に、再エネ発電所を送電線につなげない、接続費負担・接続遅延が普及の妨げになっている。送電線利用ルールを変えて有効利用するのは緊急の課題といえる。普及のコストが問題になることがあるが、海外では再エネのコストは火力と同じか安い。日本でも普及を進めれば下がるだろう。

中期的にはCO2排出ゼロ、再エネ100%にむけた対策が求められる。脱炭素で再エネの目標を示し、再エネ発電は送電線に原則接続、燃料代の安い順(太陽光風力水力など最優先)に送電網に受入、送電線利用全体で再エネを優先、省エネはさらに進め、多少の再エネ出力抑制もしながら、火力を大きく減らし、そのなかで需給調整する制度・ルールおよび技術、それに熟達した各種主体が求められる。

〈注〉
(注1)買取金額は推定4億6千万円以上、日本の制度では補償はない。
(注2)EUは、自然エネルギーの優先給電をEU再生可能エネルギー利用促進令によって定めており、原発は追加コスト(燃料費等)が自然エネルギー電力のうちバイオマス以外より高いので優先順位がこれらより劣位にあり、太陽光・風力・水力・地熱などで需給が満たされれば出力抑制の対象となる。EUルールと異なり日本の制度では原発の出力抑制は行わない。
(注3)九州電力は5月を想定した計画で、自社火力80万kW、他社40万kW(300万kWある電源開発の石炭火力発電所は全て停止)、計120万kWの出力に抑える方針を経産省審議会(系統WG第18回)に報告した。今回は自社火力を47万kWに絞る一方で他社火力は127万kW出力(多くは石炭と推定される)で上記計画を大幅に超過した。
(注4)需要側に蓄電池との意見もあるが、蓄電池は現状では高いので現時点で送電線での需給調整が安価で現実的。
(注5)欧州は国際連系線があるから楽だというのは間違いで、デンマーク、ドイツなど国際連系線利用のできる国と、ポルトガルやアイルランドなど、最大需要比で見て国際連系線容量の小さい国がある。

〈参考文献〉
・九州電力「エリア内需給2018年10‐11月」
・九州電力「今秋の再エネ出力制御の実施状況について」、総合資源エネルギー調査会第18回系統WG資料2‐1
・九州電力「再生可能エネルギーの出力制御見通し(2018年度算定値)等の算定結果について」総合資源エネルギー調査会第18回系統WG資料1‐6
・九州電力「再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく再エネ出力制御指示に関する報告」(1月3日更新)

(『東京保険医新聞』2019年2月5日号掲載)