【談話】「妊婦加算」の「凍結」について

公開日 2019年02月22日

「妊婦加算」の「凍結」について

 

2019 年2月14日
〒160-0023新宿区西新宿3-2-7 KDX新宿ビル4階
東京保険医協会
審査指導対策部長 浜野 博

 

 根本匠厚生労働大臣は、2018 年12 月28 日、2018 年4月1日実施の診療報酬改定で導入された「妊婦加算」について2019 年1月1日から「凍結」することを告示した(厚生労働省告示第四百二十二号)。今回の告示発出は、自民党厚生労働部会(小泉進次郎部会長)を中心とする与党からの圧力により、根本大臣が中央社会保険医療審議会(中医協)に対して、2018 年12 月19 日「妊婦加算凍結」を諮問し、中医協が必要な調査・検証を行うことなく即日答申したことによる。

 「妊婦加算」は医療機関の都合で「算定を選択できる」診療報酬ではなく、妊婦を外来で診療した場合に無条件に「算定する」と厚生労働大臣が告示した診療報酬である。全国10 万を超える保険医療機関に算定を指示しておきながら、今回の「凍結」にあたって厚生労働省からは、同加算を採用した経緯と趣旨、メディアが取り上げた一部の批判的意見等に対して納得できる内容分析や検証結果が十分に公表されず、決定に至ったプロセスが甚だ不透明であると指摘せざるを得ない。

 診療報酬制度改善に向けては、患者・家族の抱える要求、臨床現場の実践を通して、さらには医学や諸科学の発展に基づき、様々な団体などがエビデンスと検証を踏まえ提案を行っている。今回の決定は、これら真剣に改善提案を行ってきた人々を愚弄する行為であって、断じて容認することはできない。一部の意見だけを採用し、このような手法を許すならば、健康保険法に位置付けられた中医協での診療報酬審議は形骸化してしまう。今後、国政与党の都合に合わせ、説明もなく他の診療報酬項目でも繰り返されることが懸念される。今回の「凍結」に至る事態は、当事者の参加と自治を尊重する社会保険制度を崩壊させかねない重大な問題を含んでおり、直ちに是正されなければならない。

 今回の問題の背景にあるのは、3割負担という高額な自己負担である。私たちは、これまで患者負担の大幅軽減を求めてきたが、実際に7県では「妊産婦医療費助成制度」が実施されている。「乳幼児医療費助成制度」、「未就学児医療費助成制度」などについても、高額な自己負担があるからこそ、多くの自治体が政府の財政的なペナルティに屈することなく実施しているのだ。国施策として患者負担の軽減を速やかに図るよう求めたい。私たちは、医療担当者の技術料は基本診療料の引き上げで対応するべきであると考える。医療担当者は、決して診療報酬の高低により患者に対する診療態度を変えるものではない。

 しかし、現行の診療報酬が医療現場における過重な診療実態を正当に評価しているとは言い難い。基本診療料を中心とした診療報酬の大幅な引き上げにより、人員増員を含め改善が図られるべきだ。「妊婦加算」のような加算点数を設けるのではなく、改めて、基本診療料を中心とした診療報酬の大幅引き上げを求めるものである。

190214【談話】妊婦加算の凍結について[PDF:97KB]