保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

医科歯科連携研究会を開催―多職種連携の現状と課題

公開日 2019年03月13日

高齢者の「食べる機能」を支える

認知症の方、摂食嚥下・口腔機能が低下している在宅高齢者について、地域の医師、歯科医師、歯科衛生士等が連携することは、患者が「食べること」を継続し、日常生活を営むために大切な役割を果たす。協会医科歯科連携委員会は2月3日、東京歯科協会および千葉協会と「医科歯科連携研究会2018」を開催。医師、歯科医師、歯科衛生士、介護現場の方を招いて、実践の現状と課題を学んだ。当日は、中村洋一理事が司会およびパネルディスカッションの座長を務め、68人が参加した。

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◆シンポジスト(写真左上から)
鈴木 央 氏・医師(鈴木内科医院/大田区)
田中 英一 氏・歯科医師(田中歯科クリニック小児歯科/中野区)
小椋 玲子 氏・歯科衛生師(中野区)
冨田 眞紀子 氏・介護現場(NPO 法人なかの里を紡ぐ会 理事長/中野区)

課題は口腔領域に対する認知度の低さ

医師の鈴木氏は、歯科医師や歯科衛生士とともに在宅医療に取り組んでいる様子を紹介した。

他職種との連携の課題としては、医師のなかで口腔ケアや摂食嚥下リハビリテーションへの認知度が低いことや、連携を広げれば広げるほど、患者の負担も増加するため、理解を得るのが難しい場合もあること等を挙げた。そのうえで、歯科医師等の他職種とより近接的な連携を行うためには、医師の方からも積極的に情報を発信するとともに、歯科医師等からのフィードバックが重要であること、多職種がリスペクトしあいながら知識やケアの技術を高めあえる関係を構築することが大切であると述べた。

摂食機能の維持は地域包括ケアの核になり得る

歯科医師の田中氏は、中野区が2015年に開始した「摂食・嚥下支援事業」を紹介した。患者や家族、主治医などが、摂食・嚥下機能について、在宅療養(摂食・嚥下機能)支援センターの歯科衛生士に電話で相談し、必要に応じて医療機関の紹介や医師・歯科医師による訪問診療も案内している。個々の状況に応じて医師・歯科医師、看護師・理学療法士・ケアマネジャー等が、食べやすい姿勢や食事の形態等の支援を行っている。

田中氏は、「食べる機能を維持するという課題は、各職種がそれぞれに関わることができる可能性があり、地域包括ケアシステムのなかで核となり得る課題である」と指摘し、今後は、研修会等を通して、各職種が連携する上での必要な知識や地域の課題を共有し、それぞれの職種がメリットを感じることができるような連携を目指したい」と述べた。

誤嚥性肺炎や低栄養予防早い段階での対応を

歯科衛生士の小椋氏は、自立と介護の間にある高齢者でも、家族や介護職が口腔内の状態を把握することは困難であり、例え摂食嚥下機能に問題がなくても、義歯がない等の理由で、食事形態のレベルを下げなければならない実態があると指摘した。誤嚥性肺炎や低栄養の予防のためにも口腔機能の向上や義歯の装着・調整なども含めた維持管理が早い段階で必要であると強調し、多職種連携のなかで歯科医師および歯科衛生士が果たす役割の重要性を訴えた。

食べるは「生きがい」

冨田氏は、ホームホスピス里の家の取り組みを紹介した。ホームホスピスとは、病や障害があっても最後までその人らしく暮らせる「家」であり、里の家ではヘルパーが24時間体制で常駐し、訪問診療や訪問看護、デイサービス等も利用できる。

里の家での食事については、栄養補給という役割に留まらず、日々の楽しみや「生きがい」であると位置付け、スタッフが管理栄養士と一緒に調理をしたり、料理の見た目や食器にもこだわっていると話した。

(『東京保険医新聞』2019年2月25日号掲載)