保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【談話】保険証のオンライン資格確認とそれを進める法案に反対します

公開日 2019年03月25日

【談話】 保険証のオンライン資格確認と

それを進める法案に反対します

2019年3月13日

〒160-0023新宿区西新宿3-2-7 KDX新宿ビル4階

東京保険医協会

経営税務部担当副会長 吉田 章

 保険証資格のオンライン確認導入と各種医療情報の集積・利用の計画が進められています。

 先の2月15日、「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案」が国会に上程されました。この法案は保険証のオンライン資格確認を導入するとともに、電子カルテの標準化の支援の他、医療レセプトと特定健診結果から作られたナショナルデータベース(NDB)や介護レセプトデータなどの連結解析など可能にし、高齢者の保健事業と予防事業の一体的な実施を目指すなど個人に関する医療情報等を集積、連結、利用するシステムの構築をすすめるため法的背景を整備するものです。

 私たちは、この計画に反対します。

Ⅰ オンライン資格確認システムの概要

 これは被保険者番号を個人単位化し、マイナンバーと1対1でセットにしてデータセンターに登録することにより、保険証だけでなくマイナンバーカードでの資格確認ができるようにするものです。(オンライン資格確認等について平成30年5月25日)

Ⅱ 制度導入のメリット

 オンライン資格確認導入によって変わることとして、政府は次の二つを挙げています。(オンライン資格確認システムの検討状況)

  1. 失効保険証の利用による過誤請求や保険者の未収金が大幅に減少
  2. 保険者における高額療養費の限度額適用認定証の発行等を大幅に削減
  1. について:失効保険証による過誤請求は一般の診療所では年間せいぜい数件程度であり、また後で再請求可能で直接損失となるわけでもなく、これだけのシステムに見合うものとは考えられません。また資格確認をオンラインで行うとしても、保険証番号をマイナンバーとセットにする必要はなく、直接保険者にアクセスするシステムで十分でないでしょうか?ちなみに国税庁のe-TAXは今年からマイナンバー不要のIDとパスワードで利用できるようになっています。
  2. について:このことは保険者による保険証資格情報と自治体による住民税情報が連結されることを意味します。すなわち、保険証番号がマイナンバーと紐付けされているから可能になるわけです。一つの書類の発行の手間を省く代償として医療情報がマイナンバーと結びつくことになることも問題ですが、これはさらに医療情報がマイナンバーと結びついた他の情報と結びつく道を開くことになるのではないでしょうか?

Ⅲ 医療現場のデメリット

 医療機関にオンライン設備が必要になります。使用する回線は診療報酬請求明細書(レセプト)をオンラインで請求している回線を想定していますが、レセプトをオンラインで請求していない医療機関が2017年3月時点で、全体の43・2%にのぼっており、これらの医療機関がこの制度のためだけに設備を新設する必要が生じます。また多くの医療機関は電子カルテ、レセプトのコンピューターなどを外部から遮断したネットワークを組んでいますが、今後は資格確認のためネットワークが外部と常時つながることになり、ウイルス侵入等セキュリテイ上の問題が懸念されます。

 また、オンライン確認にはデータセンターとの通信が必要であるため、目視確認よりはるかに長い時間がかかることが考えられ(現在の試行段階では一人数分ともいわれています)、窓口での混乱が予想されます。その他、取り違え、紛失等問題は山積みです。さらにマイナンバーカードが障害になり受診抑制が起こりかねないことも危惧されます。

 こう考えてくるとこのシステムは保険証資格確認のためだけのシステムとしてはふさわしいものとはいえないでしょう。

Ⅳ マイナンバーカード普及の切り札としてのオンライン資格確認

 本年2月16日新聞報道では「菅義偉官房長官は15日、マイナンバーカードを健康保険証として利用可能にするよう関係閣僚に検討を指示した。カードは制度開始から3年たっても普及率は1割程度で、普及に向けた切り札にする。」と報じられています。2018年3月現在交付済みのマイナンバーカードは1,367万枚とされています。それに対して、現在発行されている被保険者証(保険証)は約8,700万枚です。保険証は医療機関受診の際は必ず提示しなければならないものです。単純計算では約7,300万人の国民が保険証のためにマイナンバーカードを持つ必要が生じ、大きな影響を国民に与えることが予想されます。振り返ってみると、2016年に出されたマイナンバー制度利活用推進ロードマップに2018年初めに保険証のオンライン資格確認を導入することと2019年3月の予想発行枚数として8,700万枚の数字が記載されていました。8,700万枚という数字が現在発行されている保険証の枚数とぴったり符合することにはいまさらながら驚かされます。

Ⅴ 医療情報の集積、連結、利用

 政府は保険証番号を利用し、特定健診の結果や薬剤情報を照会出来る仕組みの整備やNDBや介護レセプトデータの連結解析を可能にすることをめざしています。保険証番号を利用してデータベースを作るということはすなわち保険証番号と結びついたマイナンバーにそのデータベースは結びついていることになります。さらに政府は、オンライン資格確認システムを通して電子カルテやレセコンから直接情報を集め、データベースを作ることも考えています(医療等分野の情報連携基盤となる全国的なネットワークやサービスの構築に向けた工程表)。

 個人の特定健診結果をはじめ、診療内容までほぼすべての医療情報がマイナンバーに結びつけられることが構想されているわけです。このような形での個人情報の利用は許されてよいのでしょうか?個人のプライバシーを侵害する恐れはないのでしょうか。そもそも2013年番号法が成立したとき医療情報は特に機微性が高い情報が含まれるため、漏洩等が生じた場合、個人のプライバシーに重大な損害を与えることになるため、別の法律を作り取り扱いを検討することになっていたはずです。それがなされないまま、なしくずしに医療情報がマイナンバーと結び付けられ利用されようとしています。さらに上記住民税情報との連結が可能になることからもわかるように、マイナンバーと結びついた金融口座、証券口座などの他の情報とも医療情報が結びつくことになります。もしハッキングなどによる漏洩の他悪用又は目的外利用がなされた場合、個人が蒙る損害は計り知れません。

 一方、医師には刑法で守秘義務が課せられており、診療内容等の個人情報は厳格に守らねばなりません。このデータベース作成、利用は医師の守秘義務に抵触する可能性もあります。そもそも自分の医療情報がこのような形で収集、利用されることを国民は了承しているのでしょうか?それどころか利用されることすら聞いてもいない国民のほうが多いのではないでしょうか。

 以上の理由から、私たちは、この法案を国会で討議するのは時期尚早であり、その前に広く国民の間で議論することを求めます。

談話、保険証のオンライン資格確認に反対します[PDF:148KB]

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