公開日 2019年04月01日
困難事例、問題・解決策を探る
地域医療部は2月17日に「第6回医療活動交流集会」を協会セミナールームで開催し、会員医師のほか、訪問看護ステーションの管理者等48人が参加した。
今年度は「在宅医療・介護の連携の障害をなくすために」をメインテーマとして企画した。服部万里子氏(NPO法人渋谷介護サポートセンター事務局長)、秋山正子氏(白十字訪問看護ステーション所長)、吉野正俊会員(吉野内科クリニック院長)を招き、それぞれの視点から在宅医療・介護の連携に関する困難事例、医療・介護報酬を含めた制度上の問題点、矛盾点等を提起いただいた。司会進行はコーディネーターの中村洋一協会理事が務めた。
服部 万里子氏(NPO法人渋谷介護サポートセンター事務局長 |
秋山 正子氏(白十字訪問看護ステーション所長/マギーズ東京センター長) |
吉野 正俊氏(吉野内科クリニック 院長) |
コーディネーター:中村 洋一協会理事 |
多職種連携の重要性は共通の認識
服部氏は内縁関係にある者が認知症になった場合や社会的地位のある男性の事例などにおけるキーパーソンとなる相談相手を選定する困難さを挙げた。介護報酬の「退院・退所加算」が、入院先の主治医が退院後も主治医を継続する場合や、入院先と在宅側の医師同士で情報連携を行う場合には算定できない点などを算定要件上の課題として指摘した。また、「ターミナルケアマネジメント加算」を末期がん以外へも拡大することで在宅看取りを推進できるのではないかと提起した。
秋山氏は在宅ターミナルケアの実践例を紹介し、早い段階での相談支援、多職種の連携、ACP(将来ケア計画) の実践が在宅看取りを実現するためのポイントだと述べた。また、がん患者や家族、医療者などがいつでも利用することができる施設として豊洲にオープンした「マギーズ東京」についても解説した。
吉野氏は複数の訪問看護ステーションが訪問看護を行う際に算定制限がある点、要介護度が上がると、デイサービスやショートステイ等の利用者負担も重くなってしまう点を問題提起した。また、難病患者に対応する際の医療・介護の連携のポイントとして、専門医療機関と重複して患者をフォローすること、難病に慣れた24時間対応の訪問看護ステーション、ケアマネを確保すること等を挙げ、在宅医療の具定例を示しつつ、多職種での連携の必要性を訴えた。
制度改善を求める声
パネルディスカッションでは、医療保険での特別訪問看護指示期間は最長でも月に28日で、カバーできない数日分は介護保険での訪問看護とせざるをえないのは不合理だ、退院時共同指導の算定要件が複雑になりすぎている、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は介護度別の包括報酬となっており、頻回訪問が必要なケースでは経営的に厳しいといった、制度改善を求める意見が出された。さらにリハ職を増やし最低限の看護職で開設する訪問看護ステーションが増加していることを問題視する意見、ケアマネ試験は適性のある者が受験しているのかといった、多様な意見が出された。
(『東京保険医新聞』2019年3月15日号掲載)