【声明】政府による年金詐欺に断固抗議する

公開日 2019年07月02日

2019年6月10日

政府による年金詐欺に断固抗議する

東京保険医協会
政策調査部長 須田 昭夫

 金融庁の金融審議会は6月3日、「高齢社会における資産形成・管理」の報告書を発表した。その内容を端的にまとめると、「人生100年時代にあたり、公的年金の給付水準は今後低下していき、税・保険料の負担も増加していく。公的年金だけで老後の生活を賄うのは困難だから、『自助』努力をして金融商品に投資し、老後のための資産形成を行いなさい」というものだ。

 国民の貧困は加速度的に進行している。「65歳以上の高齢者が1人以上いる世帯」のうち、生活保護基準以下の生活を送っている世帯(貧困率)が、2016年には27.0%にも達している。金融広報中央委員会が実施した「2018年家計の金融行動に関する世論調査」では、貯蓄なしの単身世帯が38.6%もあり、二人以上世帯でも22.7%に達している。政府が第一に行うべき施策は、このような貧困の解消であり、誰もが老後の心配なく安心して生きていける社会をつくることだろう。

 報告書は「金融庁と厚生労働省は、それぞれが連携し(中略)、若年期から資産形成に取り組むことの重要性についても、広報していくべきである」とし、つみたてNISA、iDeCoの活用などを国民に勧めている。しかし、報告書が資産形成を推奨する理由としてあげている「勤労者の収入減少」、「景気停滞」、「少子高齢化」は、政府の失敗が招いた結果ではないのか。

 国民から保険料を徴収しておきながら、少子高齢化の進行や年金制度の持続可能性を担保するなどと、もっともらしい理由を並べ立て、公的年金の支給開始年齢の引き上げや、年金支給額を削減することを目的としたマクロ経済スライドの導入を計画している。これは政府による「年金詐欺」ではないか。

 憲法第25条は「①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めている。社会保障である公的年金を削減し、貧困を放置しながら、国民に投資で資産形成する「自助」を強要するのは、憲法違反と断じざるを得ない。

 憲法の精神・条文を踏みにじる金融庁・金融審議会の報告書に強く抗議する。

以上

声明「政府による年金詐欺に断固抗議する」[PDF:105KB]