保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

在宅医療シンポジウムを開催

公開日 2019年11月07日

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有賀悦子氏
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吉澤明孝氏
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中村洋一氏

 その人らしく生きるための「緩和ケア」

 研究部は9月29日、在宅医療シンポジウムを開催し、医師・歯科医師・看護師・ケアマネジャー等58人が参加した。総合司会は中村洋一理事(中野区・中村診療所)が務めた。

がんと共に生活する時代へ

 初めに有賀悦子氏(帝京大学医学部緩和医療学講座教授)から「がん疼痛緩和―基礎から新規薬剤まで」と題した講演があった。

 日本では毎年約100万人が新たにがんと診断され、約36万人が毎年がんで死亡している。一生のうちにがんになる確率は約50%と言われ、がん体験者(がんサバイバー)は約500万人にのぼる。5年相対生存率は上昇しており、長期間がんと共に生活していく時代となった。有賀氏は、「がんの疼痛症状を速やかに拾い上げ対処することで生存期間の延長につながるという報告もある」と述べ、実際の症例も交えて鎮痛薬使用のポイントを解説した。

オピオイド鎮痛薬を適切に使うために

 また、有賀氏は「ケミカルコーピング(Chemical coping)」の予防の重要性を強調した。

 ケミカルコーピングとは、オピオイド鎮痛薬を、身体的な痛みの緩和ではなく、「精神的な苦痛を軽減する目的」で使用することと定義され、その状態にある患者の傾向として「不適切・過剰な用い方で感情的なストレスを乗り越えようとしてオピオイドを使用している」「精神的問題(うつ等)がある」「依存歴がある」等が挙げられる。

 その予防策として①ケミカルコーピングのリスクを把握する(抑うつ・依存歴・人格障害等)、②初回面接(訪問)時にスクリーニングを実施する、③オピオイドに関する約束を取り交わす(処方は1カ所からだけ、早め早めの薬の補充はしない等)、④進行がんで乱用歴がある退院患者は薬物依存専門家と最初から共働しておく、などを挙げた。

 まとめとして有賀氏は、「がん疼痛の辛さを我慢すことは、その人らしく生きることを阻害する。辛さへの対処は、生命予後の長さに影響している。医療用麻薬を上手に使って、ケアに生かすことが重要で、痛みを緩和しながら、これから先のことについて、患者さんと話し合っていくことが大切だ」と述べた。

大切なのは本人や家族の意思確認

 次に吉澤明孝氏(豊島区・要町ホームケアクリニック)から「地域緩和ケア―症例を通して」と題して症例報告があった。

 吉澤氏は、緩和ケアの最終目標は①人生の最終段階における(本人にとって、家族にとっての)辛い状況を可能な限り改善すること、②その人らしい人生や生活を可能な限り最後まで継続できるよう支援すること(QOLの維持向上)、③人間としての尊厳を最後まで大切にすること(人権の尊重)を挙げた。その上で、実際にあった、入院から在宅医療への移行が困難と思われた患者について関係者でカンファレンスを実施した結果、在宅医療に移行し看取ったケースを紹介した。そして退院前カンファレンスのコツとして、①事前に家族面談をする、②面談で家族の気持ちを把握する、③必ず本人と会う、などを挙げた。

 参加者からは、「在宅での看取りを決心して退院したものの、緊急時の不安などから入院される方も多くいる。患者や家族に寄り添い話をじっくり聞いてくださる先生とチームワークがうまくとれることを望んでいる」「麻薬の使い方が理解でき、臨床現場の苦悩がわかった」「心不全や呼吸器系、神経難病など、がん以外の末期について学べる機会があるといいと思った」など多くの感想が寄せられた。

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(『東京保険医新聞』2019年10月25日号より)