【主張】公立・公的病院の再編統合に抗議する

公開日 2019年11月08日

 厚生労働省は、公立・公的病院等のうち、再編統合の議論が必要と判断した424病院の病院名を公表し、東京都でも10病院が対象に挙がった。

 これらは9月26日の「地域医療構想に関するワーキンググループ」で1455病院の中から「再検証対象医療機関」として発表されたものであり、がん等の疾患や医療事業の9領域の実績すべてで「診療実績が特に少ない場合」と、がん等の疾患や医療事業の6項目において近隣に同様の実績を有する病院がある「類似かつ近接」と分類された場合に対象となっている。対象病院は2020年9月末までに再編統合に係る結論を出すよう求められる。

 しかし、公的・公立病院は不採算分野の医療等、民間医療機関だけでは担えない重要な役割を果たしている。「地域医療構想」の進捗のみをもって病院の統廃合を強引に進めると、小児・周産期医療の後退、精神医療・難病医療からの撤退、夜間救急受け入れの中止などの事態が懸念される。医療を必要とする患者が行き場を失い、住み慣れた地域で、安全で質の高い医療を受けられなくなる恐れもある。住民や医療現場の声を聞くことなく、「地域医療構想」の名のもとに一方的に再編統合を押し付けることは断じて容認できない。

 10月4日に開催された全国知事会でも、鳥取県の平井伸治知事は「病院に就職しようとしていた看護師さんが、やめようかと言い始めている。大変な影響が地方で生まれている」と危機感を募らせている。

 厚生労働省医政局は翌9月27日、『地域医療構想の実現に向けて』を発表し、その中で、今回の「再検証対象医療機関」の公表は、必ずしも医療機関そのものの統廃合を決めるものではないと主張した。名指しして病院名を公表しておきながら、その場を取り繕って何になろう。「地域医療構想」は地域の主体性に任せるとした厚労省の前言を覆すような手法は看過できない。

 さらに見逃せないのは、今回の公表は「経済財政運営と改革の基本方針2019」(いわゆる骨太方針2019、2019年6月21日閣議決定)に基づいたものであり、その中では「民間医療機関についても、2025年における地域医療構想の実現に沿ったものとなるよう対応方針の策定を改めて求める」とされていることである。各地方には、疾病構造や患者を取り巻く経済状態等の様々な特性があり、医療の必要性は医療従事者数、医療機関数、病床数だけでは計り知れない。「再検証対象医療機関」をたかが15項目で推し量り、強硬的に再編統合を進める政府の姿勢はあまりにも乱暴であり、許されない。

 東京保険医協会は、今回の厚生労働省の一方的な措置に対し強く抗議し、公表データの撤回を求めるとともに、医療費削減のみを目的とした医療機関の統廃合ではなく、国民の健康に寄与しうる医療提供体制の構築に向けて真摯に取り組むことを併せて要望する。


(『東京保険医新聞』2019年11月5日号掲載)