在宅医療会員懇談会-在宅医療は「地域の灯台」

公開日 2019年12月17日

 11月22日、組織部は在宅医療会員懇談会を開催し、内科、整形外科、精神科の会員ら20人が参加した。コーディネーターは中村洋一理事(中野区・中村診療所)が務めた。

 

大切なのは地域のネットワーク

 近年、在宅医療の高点数化や患者の高齢化をきっかけに在宅医療に取り組む医師が増えている。中村理事は、在宅医療を行う中で起きる問題やその対処法などについて話題提供した。

 在宅医療は、20年前は診療報酬体系の中になかったが、中村理事自身も参加した協会の要請行動等によって認められるようになった。在宅の点数を改善する過程には現場の声が不可欠で、協会は現場の声に耳を傾け、厚労省交渉や要請行動を続けてきたと述べた。

 外来診療と比べて注意すべき点として、①外来診療以上に患者やその家族のプライバシーに踏み込まなければならないこと、②24時間対応を求められること、③地域との連携を大切にすることなどを挙げた。

 近年、精神科の在宅医療について、鬱によるひきこもりへの治療等でニーズが高まっている。しかし、まだ担当できる医師が少なく、治療できずに自殺に至るケースもあると中村理事は述べた。

 地域との連携づくりの例としては、中野区医師会の取り組みを紹介した。ケアマネジャーや訪問看護師も参加する難病患者訪問診療事業や、耳鼻科や眼科等の専門医師の往診体制によって、意思疎通がしやすい地域のネットワークをつくることの重要性を強調した。

 また、医療者以外へのアピールとして、地域包括支援センター圏域毎の交流会や住民の会に参加することも重要だとして、「住民が困った時に頼ってもらえる地域の灯台の役割を果たせるようになりたい」と述べた。

 患者や家族との関係づくりでは、複写の説明用紙を渡す、絵に描いて見せるなどの工夫を行い、患者によって、アドバンスケアプランニング(ACP)や看取りの際に家族のケアを行うことも大切だと述べた。

 その他、日常診療における悩みや、自身のメンタルケア、働き方の問題などについても取り上げた。

 

様々な課題が浮き彫りに

 懇談では、参加者から様々な課題や苦労、要望などが寄せられた。

 「一人で診療しているので、往診に出ると外来対応が止まってしまう」との悩みには「看護師を雇って先に往診先に行ってもらい、簡単な検査や処置を頼んではどうか」とアドバイスがあった。24時間対応のストレスから在宅支援診療所をやめてしまったとの声もあった。また、在宅診療を検討中の参加者からは、点数体系の複雑さから踏み切れずにいる実状が語られた。

 診療報酬については、「通院在宅精神療法と在宅時医学総合管理料の併算定に制限をかけた規定の撤廃」「同一建物居住者を診療した場合の点数が低くなる規定の撤廃」「外来に通えなかったために在宅医療を受けていた患者を、外来に通えるように治療したときの評価の新設」などの要望が上がった。

 閉会にあたり、中村理事は「様々な切り口で、今後も懇談会を開催していきたい」と挨拶した。

 各科別会員懇談会は毎年秋に開催している。

 

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(『東京保険医新聞』2019年12月5・15日合併号掲載)