保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

【談話】国民医療向上のため診療報酬引き上げを

公開日 2019年12月26日

東京保険医協会
審査指導対策部長 浜野 博

 2020年4月実施予定の診療報酬改定について、加藤勝信厚労相と麻生太郎財務相が12月17日に折衝し、改定率をマイナス0.46%とすることで合意した。内容は、本体部分を0.55%引き上げとし、そのうち0.08%は消費税財源を用いて「救急病院における勤務医の働き方改革への特例的な対応」を行うという。薬価はマイナス0.99%、医療材料価格もマイナス0.02%である。消費税引き上げ補填と称する2019年10月改定を除き、安倍政権下で4回連続の実質マイナス改定である。

 11月13日に発表された「中医協第22回医療経済実態調査」は、病院が赤字基調から脱していないこと、診療所も経営の改善が見られないこと、依然として医療従事者の給与水準は低い状況に留まっていることなどが示されている。もともと、同調査に協力するのは法人医療機関、高収入医療機関に偏りがちであり、そういった統計でさえ経営難の実態が示されていたのである。

 同調査によれば、一般病院全体の人件費(給与費)率は56.5%、同じく一般診療所は48.2%である。医療現場では医療従事者の活用が重視される在宅医療や、他医療機関、介護・福祉施設、行政との連携が求められている。さらには、働き方改革の推進も待ったなしである。本体部分の0.55%引き上げでは、人件費、物価の高騰への対応もおぼつかない。消費税率引き上げによる損税増額はさらに経営を締め付けていく。マイナス改定で、政府は医療機関にこれ以上何を削減しろと言うのであろうか。

 改定率決定に向けては、政府の経済財政諮問会議(議長:安倍晋三首相)の圧力があったとされている。12月5日の同会議の審議内容発表に際しては、「赤字が多いから報酬を引き上げることに反対」とする、審議委員の意見を匿名で発表するに至った。最大利潤の最大追及を目指す株式会社の経営と、地域に根差し公衆衛生の向上を最大の目標とする医療機関経営の違いを無視した意見である。しかし、この意見を「陳腐な意見」、「医療費削減のための圧力」という視点だけで見てはいけない。わが国の医療機関については欧米の財界が垂涎の的として、「株式会社に経営させろ」と毎年要求してきている。診療報酬の引き下げにより、医療機関経営を悪化させる目的が、医療費削減だけではないのは明らかだ。むしろ、診療報酬の引き上げ・改善により医療機関の目標である国民の健康が増進するならば、結果として総医療費が削減されていくのは至極当然のことではないだろうか。

 中医協では、2020年2月上旬の診療報酬改定の諮問答申に向け、審議が続いていく。診療報酬の連続マイナス改定に強く抗議するとともに、国民医療を守る立場から診療報酬の大幅引き上げを引き続き求めていく。

(『東京保険医新聞』2019年12月25日号掲載)