保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

マイナンバー問題学習会―保険証で資格確認は十分

公開日 2020年02月08日

 経営税務部は1月11日、「医療情報連携とマイナンバー制度がつながるとどのような問題が起きるか」をテーマに学習会を開催した。講師に「共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会」の原田富弘氏を招いた。

 国は、データヘルス改革として、縦割構造で管理されていた健康・医療・介護のデータを連結して活用する仕組みの構築を決めた。
国側の説明では、複数の機関に存在する個人の情報を同一人の情報にひも付けする必要があり、マイナンバー制度は、そのための基盤とされている。年金のように国民一人ひとりの生涯を通じて「タテ」につながる情報と、医療・介護など制度横断的に自己負担上限額を定める場合に分野を超えて「ヨコ」につながる情報をマッチングするためのインフラとして国が利用しようとしているのが、マイナンバーである。

 支払基金・国保中央会は、医療機関や保険者から収集した膨大なレセプト、特定健診、薬剤情報のデータセンターとなり、住民税、年金、雇用保険などの情報も連結される。個々人の住民票コードとマイナンバー、機関別番号は、1対1で対応しているためである。そして各機関から情報提供の依頼があれば、相互に情報を提供しなければならないことが法で定められている。

 原田氏は、「機微情報は提供してほしくないといった個人の希望は、一切反映されない仕組みだ」と指摘した。

■オンライン資格確認の導入

 2016年に運用が始まったマイナンバーカードの普及率は、14.7%(2019年12月19日現在)と低迷している。しかし、国は2023年にはほとんどの国民にカードを保有させることを目指しており、マイナンバーカードに保険証機能を持たせることを普及の切り札としている。2021年3月には、医療機関でオンライン資格確認ができる仕組みを導入し、顔認証付きカードリーダーを設置する考えだ。2022年度末までに概ね全ての医療機関での導入を目指す。

 国は、「患者本人がマイナンバーカードをカードリーダーに置いて読み取るので、医療機関がマイナンバーカードを預かる訳ではない」としているが、高齢の患者など医療機関が患者に代わって扱わざるを得ない事態も出てくる。「カードをなくされた」と訴えられるケースも想定され、危険性は保険証紛失の比ではない。
さらに、マイナンバーカードを保険証として利用するには初回設定が必要であり、設定の済んでいないカードを持参された場合など、医療機関は煩雑な事務作業を求められることになる。

 現在は、万一資格喪失後であったとしても、窓口で保険証を確認していれば、医療機関に落ち度はなく保険請求は認められる。しかし、カードリーダーによる資格確認が本格化し、その場で資格の相違が分かれば、10割負担を求めるケースの増加が予想される。

 オンライン資格確認には、診療報酬のオンライン請求の回線を利用するとしている。請求専用であった回線を他の目的で利用することになり、将来は各医療機関の持つ情報がデーターセンターに自動で吸い上げられるルートになる可能性もある。

■求められる「カードを使わせない」取り組み

 カードリーダー設置は義務ではなく、設置したとしても健康保険証による資格確認はできる(図参照)。マイナンバーカードの取得は義務付けられておらず、総務省も「取得の強要は適当ではない」としている。

 原田氏は、「国は、オンライン資格確認の仕組みを利用して医療や健康の個人情報を管理・共有し、さらにはビッグデータとして成長戦略に利用しようという考えだ。マイナンバーカードの利用拡大を防ぐには、この1年が正念場。カードの取得はメリットがないばかりか、紛失や機微情報漏洩の危険が増すことを知らせていく必要がある」と強調した。医療機関側の対応として、患者に対し「従来通り健康保険証で資格確認はできるので、マイナンバーカードの取得は不要」と日頃から説明しておくことも重要だとした。

 質疑では、マイナンバーに携わる行政職員によるデータの不正閲覧の懸念もあがった。実際、2020年1月の会計検査院の発表によれば、約4割の市区町村で管理者の許可なしにマイナンバーの利用端末から情報を持ち出すことが可能と、杜撰なセキュリティー体制が明らかになっている。にもかかわらず総務省は、マイナンバーと預貯金口座の連結義務化を要請している。

 個人情報の自己コントロール権もなく、個人のスコアリングや監視社会へつながる本制度について、今後も注視が必要である。

(『東京保険医新聞』2020年2月5日号掲載)