【談話】国民の基本的人権を制限するインフル特措法改定案の成立に抗議する

公開日 2020年03月13日

2020年3月13日

東京保険医協会
政策調査部長 須田 昭夫
 

国民の基本的人権を制限する
インフル特措法改定案の成立に抗議する

 

 新型コロナウイルス感染症を、新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法)の対象に加える改定案が、3月13日に成立しました。
 特措法には、首相の「緊急事態宣言」によって、都道府県知事を通じた外出自粛要請や、多数の人が利用する施設の使用やその施設を使った催し物の開催などを制限・停止するよう、要請・指示できることが盛り込まれています。また、臨時の医療施設を開設する目的で、土地や建物を所有者の同意なしに使うことも可能になります。
 憲法が保障する基本的人権(移動・経済活動・言論・集会等の自由、財産権等)の大幅な制約を可能にする内容であるにも関わらず、衆院内閣委員会ではわずか3時間の審議で採決されました。以下多くの項目について、強い懸念を抱くことから、われわれは特措法の拙速な成立に抗議します。

、 「緊急事態宣言」の発動にあたり、国会の同意や事前・事後承認が省略され、国会は「緊急事態宣言」に基づく措置を止めることができない。
一、 私権制限がもたらす人権侵害に対する、救済措置が定められていない。
一、 強力な人権制限を伴うにも関わらず、「緊急事態宣言」の発動要件が不明確である。
一、 「緊急事態宣言」が国会に諮ることもなく、首相個人の判断で発動できる。
一、緊急事態宣言後に都道府県知事が行う「要請」や「指示」の期間・地域・対象について、法文上の規定がなく、恣意的に運用される可能性がある。
一、緊急事態宣言の前であっても、「公私の団体・個人に対し必要な協力の要請」ができる権限を、都道府県知事に与えられる。
一、科学的な根拠が示されていない感染症対策など、思いつきの政策により、かえって非常時の混乱を招く恐れがある。


 政府は、感染症予防法をはじめ、感染症の拡大や経済的な混乱の防止に有効な既存の法律を有効に活用してきたのでしょうか。検察官の定年延長問題をはじめ、法律の恣意的な解釈が政府によって繰り返され、行政への信頼が大きく揺らいでいます。
 このような中で、民主主義の根幹を揺るがすような強大な権限を個人に与え、なおかつ国民の基本的人権を制限する特措法を成立させたことは遺憾です。

以上

談話「インフル特措法改定案の成立に抗議する」[PDF:160KB]