公開日 2020年07月20日
東京保険医協会は、6月12日に会員医療機関4833件に第3回「新型コロナウイルス感染症による医業経営への影響【緊急アンケート】」をFAXで送付し、6月19日までに都内930件の医療機関から回答を得た(回収率19・2%)。
集計結果からは、多くの医療機関が4月上旬の状況と変わらず、深刻な経営状態に陥っていることが明らかになった。
外来患者・保険診療収入減少傾向変わらず
一般診療所(回答数857件)の90・0%で外来患者数が減少し、89・6%で保険診療収入が減少していることが明らかになった。
また、約6割の医療機関で、外来患者数と保険診療収入が3割以上減少していた。外来患者数と保険診療収入が5割以上減少している医療機関は2割を超えた(図1・2参照)。
※6月上旬の状況を前年同期と比較し回答
4月に実施した同内容の調査と比べると、外来患者数と保険診療収入でわずかな差が見られるものの、緊急事態宣言解除後も、深刻な患者の「受診控え」が続いていることが伺える。
マスク、エタノール、防護用品の供給は改善か
マスクでは5・8%、消毒用エタノール製剤では23・5%、防護用品では59・2%の医療機関が「足りない」と回答した。「在庫あり」でも「4週間以内に在庫がなくなる」との回答が、マスクで32・7%、消毒用エタノール製剤で52・6%を占めている(図3・4・5参照)。
4月と比べると、供給において一定の改善がみられるが、消毒用エタノール製剤はすべての医療機関に十分な量が行き渡っているとは言い難い。
電話再診は4月から傾向変わらず
電話再診は53・9%の医療機関が「増えた」と回答している(図6参照)。
第2波に備えて医療機関の減収補填を
医療機関は、新型コロナウイルス感染患者を受け入れている、いないに関わらず、地域で役割分担をしながら、医療提供体制を担っている。
第2次補正予算では、新型コロナウイルス感染患者を受け入れている病院への支援が強化された。しかし、感染患者を受け入れていない病院・一般診療所への支援(減収補填)は見送られた。
深刻な受診控えが続く中で、医業経営は危機的状況に陥っている。この状況が続けば、多くのかかりつけ医療機関が閉院に追い込まれ、第2波への備えが困難になる。また、患者の慢性疾患の管理にも重大な影響を及ぼすことも懸念される。
地域医療を守り、医療崩壊を防ぐために、協会は6月25日、①医療機関の保険診療減収分について、公費による補填を行うこと、②家賃支援給付金制度の給付対象月を2020年3月からに変更すること(※現行は2020年5月から12月までが対象)、を求める緊急要望書を内閣総理大臣、厚生労働大臣、財務大臣宛てに提出した。当日は東京都選出の国会議員を中心に要請活動を行った他、午後には厚生労働省内で記者会見を開き、須田昭夫会長と吉田章副会長がアンケート結果を発表した。
記者からは、第2次補正予算に係る評価や、医療機関への補填の費用をどこから支出するのか、地域の医療機関が閉院した場合の影響など、活発な質問が出た。
医療機関の現状を説明し、減収分の公費補填と家賃支援給付金の要件緩和を訴えた(6月25日、厚生労働省内)
診療科別・保険診療収入の減少 |
※6月上旬の状況を前年同期と比較して回答。
※特に保険診療減収の著しい診療科を掲載しました。
(『東京保険医新聞』2020年7月5日号掲載)