保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

コロナ禍での診療を考える① 日常診療で起こっている変化とこれからの課題

公開日 2020年08月06日

日常診療で起こっている変化とこれからの課題 

nakamura

(医)中村診療所 中村 洋一

 緊急事態宣言が出されて外出自粛、イベント自粛が始まり、最初は高をくくっていた受診抑制は1カ月も過ぎない内に、みるみる患者数の動向に変化が出てきた。昨年と今年の6月を比べると65歳以上では11%の減少だが、それ以下では50%の半減である。国保は24%、社保23%、後期高齢者9%の減少で、逆に生活保護は39%の増加になった。

 高齢者は家族からのデイサービスの自粛要請、通院控えなどで脚力低下が真っ先に現れた。94歳女性は毎月歩いて通院していたが、電話対応になり、認知症の88歳女性は通院しなくなりどうなったか不明。その他に慢性心不全の悪化、認知症、転倒による身体障害などが原因でフレイルが進み在宅患者が数人増えた。

 サラリーマンは在宅ワークの中で、時間を持て余し飲酒量が増え、痛風発作、血圧上昇などが見られた。ある日は続けて3人の痛風発作の中年男性が来るなど生活習慣の大切さを認識した。体重増加は筆者も含めて軒並みである。

 この2カ月間で在宅患者の3人が誤嚥性肺炎により救急入院となったが、コロナ肺炎との鑑別が必要になり、普段なら一般病棟での加療となっていたところが、感染症病棟への隔離と面会禁止で、虚弱が一挙に進んだ。家族面会が出来ないために認知症が悪化、1例は退院するも食べられず自宅看取りになった。

 慢性疾患患者での電話対応(オンライン診療)は矢張り問題が多い。電話では詳しい状況は客観的に把握できず、本人の自己申告のみなので服薬状況、身体所見や詳しい症状などをきちんと確認はできない。まして、打聴診、視診もできず心音の変化、浮腫の有無など高齢者診療では大事なポイントも確認はできない。

 小児患者は皆無になり、その代わり孫が遊びに来なくなり鬱気分、不安障害になった70代女性のケースも数例出現。

 多くの病院での手術や検査の延期による症状悪化も経験した。大学病院での尿管癌ステント交換が延期になりステント閉塞、局所再発を来した。

 このようにコロナ禍の影響は枚挙に暇が無い。実感するのは治療中断による症状悪化である。また外来コミュニケーションが途絶えることによる、高齢者の孤独の増加である。今後、地域ではフレイルが進み在宅ケアが必要になる高齢者が増えると予測される。

 今後は町の開業医として地域の患者の健康管理をもっと意識して取り組む必要を感じる。通院中断している慢性疾患患者へ受診を促し、薬剤の確認などきめ細かな診療対応が重要である。また新型コロナウイルスへの最新知見を常にアップデートして患者住民への情報提供、感染疑い患者への適切な検査誘導なども重要な役目であろう。

 最後に付記するのは救急対応している病院への配慮である。新型コロナウイルス感染症疑い患者の入院でたちまち病院は緊迫感が増し対応が大変になる。こればかりは開業医では事前診断はできないので、普段からの病診連携の絆と信頼から連携医療を図ることが大切である。

(『東京保険医新聞』2020年7月25日号掲載)