[要請]新型コロナウイルス検査に関する要望

公開日 2020年08月14日

2020年8月12日

厚生労働大臣 加藤 勝信 殿

東京保険医協会
会長   須田 昭夫
研究部長  申 偉秀 

新型コロナウイルス検査に関する要望

 

 

要望趣旨

 

 新型コロナウイルス感染症の第一波については、国民の自粛行動と医療現場の奮闘によって辛うじて感染拡大を抑え込めました。しかし7月からの大都市をはじめとする感染拡大は、対応次第では医療崩壊を招く恐れが大きいと思われます。その間の政府施策に加えて医療現場からみた感染拡大抑止策を提示して行政の支援を求めます。

 ついては、具体的に以下の3項目について要望致します。ご検討のうえ、速やかに実現いただきますようお願い申し上げます。

 

 

要望1 新型コロナウイルス感染症の診断を診療所や一般病院において安全かつ迅速に診断するために、唾液検体による抗原検査、および唾液検体により新型コロナウイルスとインフルエンザを同時に診断できる検査キットの開発と導入の補助、医療機関スタッフの検査費用の助成をしてください

 

理由:感染者数増加に伴い、保健所の業務(濃厚接触者追跡、陽性患者の入院・療養の斡旋、療養のフォローアップ)が処理能力を越え、職員の疲弊が深刻です。鼻腔拭い液採取に比べて安全性の高い不活化溶液を利用した唾液検体であれば、診療所で検査の必要な患者の迅速な診断につながります。結果的に地域から感染拡大を最大限に抑え込み、重症者・入院患者数抑制に大きな効果が期待できます。そのためには東京都医師会会長の提言する人口1万人当たり1検査施設の設置を目指すべきと考えます。

 現在唾液からのPCR検査が可能になりましたが、検体採取に伴う感染リスクへの懸念から患者の受診忌避と検査数の停滞が起こっています。スワブで唾液を吸い取り不活化溶液に入れることで感染性を除去するなど唾液採取の安全な標準プロトコールを示し、医療側・患者側とも安心を回復するよう望みます。

 一方、検査を行う医療従事者のPCR検査は感染予防に決定的に重要ですが、医師国保では制度上保険で自院でのPCR等検査ができません。検査費用本体である公費部分を自院での検査でも使えるように要望いたします。

 

要望2 介護関係諸施設への新型コロナウイルス感染症検査の充実、感染防護具等の行政からの支援、および医療機関スタッフへの定期的PCR検査体制を拡充してください

 

理由:全世界で新型コロナウイルスによる死亡者の過半数が高齢者施設の入居者であり(カナダ:70%以上、ノルウェー:60%以上、フランス・ベルギー:50%以上)、国内でも死亡者の15%を占めています。日本の高齢者施設で死亡数が少ないのはケアスタッフの高度で献身的な働きによるものですが、これ以上感染が増えると介護崩壊が起こりかねません。高齢者施設は、多疾患で脆弱な高齢者が集住し、ケアを通じて密な接触が発生することから、集団感染を起こしやすく、また瞬時に入居者や職員に感染が拡大します。

 施設側はすでに面会制限等感染の持ち込みリスクを最小化しており、東京都医師会からは、入居者の感染発症時にPCRカーを導入する提言がなされています。したがって介護施設での感染予防には日頃からの感染防護体制に十分な個人防護具の支給に加え、施設の医療・介護スタッフに週1回のPCRまたは抗原検査が必須と考えます。

 介護施設と並んで新型コロナウイルスのエピセンターとして院内感染が挙げられます。無症候・ほぼ無症候の受診/入院患者からのコロナ発症とクラスター化を勘案すると、病院スタッフへの定期的PCR検査は、有症状者への保険診療とは一線を画した「感染爆発抑制」の観点から、早急にすべての病院施設での定期的PCR検査を開始する必要があります。行政は全自動PCR機または定量的抗原検査機の導入および検査試薬の無償提供をすべきと考えます。

 

要望3 クラスターが発生しやすい業態への十分な休業補償を行ったうえでの休業要請とPCR検査を実施してください

 

理由:感染の起こりやすい業態であることのみの理由で、補償なく休業要請したり、罰則を設けることは営業の自由を保障した憲法にも抵触します。十分な補償をもって一定期間の休業を依頼し、PCR検査を用いたフォローアップで感染状況を把握して、実行可能な感染予防ガイドラインを共に策定することで営業を再開させることが感染予防と経済活動の両立につながると思われます。

以上

新型コロナウイルス検査に関する要望書[PDF:140KB]