【要望書】新型コロナウイルス感染症に関する要望

公開日 2020年08月28日

2020年8月28日

内閣総理大臣  安倍 晋三 殿
厚生労働大臣 加藤 勝信 殿

東京保険医協会 会 長  須田 昭夫
研究部長  申 偉秀

新型コロナウイルス感染症に関する要望

 

 新型コロナウイルス感染症への対応に敬意を表します。今冬のインフルエンザ流行期における発熱患者への対応として、厚生労働省ではかかりつけ医を中心とした外来・検査態勢の整備について8月末の新型コロナ感染症対策本部会合で決定するとしています。インフルエンザ/新型コロナウイルス感染症への円滑で十分な対応のために検体採取に関する事項および、陽性者への対応を含めた指定感染症の取り扱いについて、以下の通り要望致します。ご検討のうえ、速やかに実現いただきますようお願い申し上げます。

要望趣旨

要望1 新型コロナウイルス診断(PCR/抗原検査)のため、鼻前庭からの検体採取法を広く周知し、インフルエンザ抗原検査のための鼻前庭からの検体採取を認可してください

要望2 新型コロナウイルス感染症を感染症法上の「指定感染症2類相当」から外し、本感染症に即した新たな分類を作成してください

要望理由

要望1の理由本来鼻咽腔および咽頭ぬぐい液、喀痰がPCRの検体対象でしたが、本年6月2日に唾液も対象とされました。さらに7月17日に更新版の「2019-nCoV感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル(国立感染症研究所)」では、「医師等の監視下で自己採取する鼻腔(鼻前庭)ぬぐい液」でも採取可能とされました1

 さらに、米・豪で医師が採取した鼻咽腔ぬぐい液と鼻前庭スワブ法2)の検査結果には差がないとされました。また、6月3日付け日本感染症学会の提言に示されているように、鼻前庭からのスワブ検体で新型コロナウイルスとインフルエンザ抗原検査が可能となれば、診療所等で発熱患者の鑑別診断(コロナ/インフルの有無)がつくことから、診断のために病院・保健所を経ることなく迅速な治療・隔離が行われ、医療機能崩壊と感染拡大の予防に資すると思います3)。本法がかかりつけ医療機関で広く実施できるよう、早急に鼻前庭検体によるコロナ/インフル抗原検査の陽性率および安全性の検証と周知をお願い致します。

 

要望2の理由新型コロナウイルス感染症は国民の健康に重大な影響を及ぼす可能性が高いとして、感染症法上での指定をせず、1年(最大2年)の有効期限のもと指定感染症4)(第7条)とされました。

 指定感染症では全数報告、全患者の把握と強制隔離が必要な、医療費公費の「2類相当」とされましたが、感染拡大時に対応する保健所の疲弊、入院対応をする病院の機能低下と医療崩壊を招くことが憂慮されています。また無症状や軽症の陽性者の隔離療養場所を巡る混乱もあり、必要なPCR検査実施が推進されず、流行拡大抑制が阻害されている実態があります。

 従って指定感染症2類相当としているものを一旦廃止し、本疾患に特有な事情を勘案しながら必要な検査・行政指導は可能とすること、検査・入院・療養の別を状態によって臨床現場で区別できるような指針作成と新たな分類を作成してください。保健所(行政)は全数を把握していただき、必要なクラスター、エピセンター、ハイリスクグループなどの、対応とフォローに専念できるようになり、無症状・軽症患者に対する入院・施設隔離原則を柔軟に運用することが可能となります。

 本疾患のうち2類相当以外とされた症例も必要な検査・入院・療養に係わる費用は引き続き公費負担として受診を促し、また医療機関、介護施設等のスタッフや入院・入居時患者等へ行う検査費用も国が支援していただくよう要望致します。


<参考文献>

1) https://www.mhlw.go.jp/content/000650337.pdf
2) Tu YP et al., NEJM. 20202. DOI:10.1056/NEJMc20166321
3)http://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/2008_teigen_influenza_covid19.pdf
4) 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=410AC0000000114&openerCode=1#A

以 上

【確定版】新型コロナウイルス感染症に関する要望書[PDF:234KB]