保険医の生活と権利を守る東京保険医協会

コロナ禍での診療を考える③ 通常の生活を乱し、社会の調整能力を超えたコロナ禍

公開日 2020年09月14日

通常の生活を乱し、社会の調整能力を超えたコロナ禍 

田中先生(クリニックHP)

一田中まき整形外科 田中 眞希
 

 

 近年、震災・水害・土砂といった自然災害が、多様化頻発している。

 あらためて「災害」の定義を紐解くと、WHOは、「a disaster is an occurrence disrupting the normal conditions of existence and causing a level of suffering that exceeds the capacity of adjustment of the affected community」と発表している。「通常の生活をかき乱し、社会の調整能力を超える苦しみを引き起こす出来事」と訳されるだろうか。これによれば自然現象のみならず人為的原因による異変も、また今回のCOVID―19のような、目に見えないウイルス感染も「災害」である。

生活・運動習慣の乱れ

 整形外科としては、リモートワークによる不調(無理な姿勢での痛み、ならびに不慣れな運動での障害)の相談が増えたと感じる。4~7月の当院受診者において年齢が若いほどこの傾向が強く、20代の初診男性の何と22%が、自宅生活に起因する症状を訴えた。

 「身体を動かさなきゃと思うが外出はこわい」「体重が短期間に増えて体調が悪い」という話もしばしば聞かれた。

物資は今も調整されず

 医療資材不足に悩まされ続けている。患者に触れるリハビリテーションでは、手袋・予防着が私を含めた5人に必要であり、特に訪問リハビリでは患家ごとに替えるため、エプロンは1日25枚は消費してしまう。

 エプロンしてくれて安心(本当は予防着が望ましいのだが)だと患者さんには言われるが、その分、感染媒介できないというプレッシャーも感じる。

通常の生活や社会とは?

 コロナ禍の中、医療崩壊が叫ばれて久しい。確かにCOVID―19感染は近代まれにみる災害ではあるが、もともとの医療体制が脆弱(人的にも経営的にもギリギリ)だったことも拍車をかけた。

 同様に、前述のリモートワークでの身体不調や、自宅待機での精神的苦痛は、そもそもの住宅や生活環境が劣悪だったからではないか?欠品は過度に輸入に頼りすぎているからではないか?

 地方創生を謳いつつ東京への一極集中が許されてきたが、その大都市は1日を室内で過ごすには耐えがたい住環境で物資供給も不安定であり、私たちの「通常」がおかしい状況に陥っていたと思われる。

健康のためには「地方分散」か

 人口が多い東京には医師も多数必要で、トップダウンの医師適正配置論はおかしいと、当協会は論じてきた。決して誤りではないが、健康維持に必要な居住面積を確保するために過密を是正し、行政府・教育機関を含む地方分散を考案するよう、要望の方向性を変える時期かもしれない。

(『東京保険医新聞』2020年9月5日号掲載)