私と保険医協会「困ったときに保険医協会は頼りになります」

公開日 2020年09月14日

「困ったときに保険医協会は頼りになります」

千代田区 水山 和之 

水山和之Dr

 私が35歳で義父の跡を継いで開業してから、早くも四半世紀が経過しました。当時は、介護保険がスタートする直前で、構造的に大変革の頃でしたが、希望にも満ち溢れていました。

 しかし、大学や各種学会で学術の勉強は積んでいても、保険診療や経営の教育研修を受ける機会はありませんでした。『保険点数便覧』がバイブルになるのですが、この本はとても複雑で、医事課の職員や事務長の知識と経験に頼ることになります。診療報酬に関していろいろと出てきた疑問点は、東京保険医協会に電話相談をしてきましたが、いつでも、どんな質問にも親切に教えてくれて感謝しています。

 そんな中でのエピソードを1つご紹介します。

 私が勤務する病院の療養病棟に、前立腺がんの患者を受け入れたことがあります。その際、前医からリュープロレリン(リュープリンⓇ)注射を継続することを求められ、ご家族も希望していました。

 リュープロレリンは抗悪性治療薬のホルモン療法薬に分類される薬で、1回の薬価が、現在の価格で3万6千222円で、なんと入院料の3~4日分に相当します。当時はもっと高かったでしょう。

 基本的に療養病棟の入院料は包括制で、薬剤料は別に請求できませんが、保険点数便覧には「抗悪性腫瘍剤及び疼痛コントロールのための医療用麻薬」は包括に含まれず、別に請求できると書いてあります。当然にレセプト請求をしていたのですが、ある時、国保連合会から突然数カ月分さかのぼって査定されました。保険点数便覧には、一般病棟の他の規定では、ホルモン療法薬も抗悪性腫瘍剤に含める記載がありましたので、国保連合会に電話で問い合わせましたが、「リュープロレリンは前立腺がんに適応症があっても、抗悪性腫瘍剤ではない」の一点張りです。

 ふと東京保険医協会のことを思い出し、問い合わせたところ、協会は動いてくれました。数週間後、厚労省の診療報酬に関するQ&Aに、「療養病棟では、リュープロレリン注射液は、抗悪性腫瘍剤で算定できる」と記載されたのです。現在でも保険点数便覧の事務連絡の問9(平成28年3月31日)として記載されています。

 国保連合会や社会保険支払基金は担当者の判断で査定しているのではないかと思われるケースが少なからずありますが、保険医協会は、一会員の質問に対しても患者さん・保険医のために闘ってくれることを知り、大変に驚いたことを昨日のように覚えています。

 地域医師会は診療報酬の請求代行業務、区市町村の健康診断や介護保険などの行政との連携、日医認定産業医活動等に必要です。しかし、診療報酬についての質問には答えてくれません。そんな時は、東京保険医協会に電話すると助けてくれます。

 そのほかにも、協会は大学や研修病院では教えてくれない経営のノウハウ、労務管理、医療安全、接遇の研修など様々な事業を行っています。特に、診療報酬改定説明会や、指導監査対策の研修は圧巻です。

 また、ウィズコロナで国民も医療機関も未曽有の危機に突入していますが、協会の新聞・ホームページには新型コロナ情報や助成・融資の情報が満載です。診療所の減収の実態を調査する緊急アンケートを実施し、マスコミでも報道され、東京都や国に請願してくれます。東京保険医協会は、私たちと一体となって動いてくれる、頼れる存在です。

 各種研究会は原則として製薬メーカーのスポンサー無しなので、純粋に勉強になります。学会は自分の専門領域だけですが、東京保険医協会では、専門外の分野も含めて広く勉強できるのが嬉しいところです。個人的には、腹部超音波研究会(ハンズオンセミナー)が大変に役立っています。 

 ウィズコロナの時代、また、アフターコロナを見据えても、東京保険医協会への入会はお勧めです。

(『東京保険医新聞』2020年9月5日号PR版掲載)