[談話]新型コロナの時限的措置を長期化させず、安心で安全な医療を提供するための体制拡充への支援を

公開日 2020年10月07日

2020年9月18日

東京保険医協会
審査指導対策部長 浜野 博
 

新型コロナの時限的措置を長期化させず、
安心で安全な医療を提供するための体制拡充への支援を

 

  4月10日付事務連絡で、新型コロナウイルス感染拡大に伴う時限的措置として、初診での電話や情報通信機器を用いた診療・処方が解禁された。この事務連絡は、緊急事態宣言が4月8日に7都府県に発令され、それを受けて発出されたものだ。現に事務連絡には「新型コロナウイルス感染症が拡大し、医療機関への受診が困難になりつつある状況下に鑑みた時限的な措置である」とし、「感染が収束して本事務連絡が廃止された後に診療を継続する場合は、直接の対面診療を行うこと」と記載されている。しかし、緊急事態宣言が解除されても未だに通知は廃止されておらず、8月26日付事務連絡では当面継続する方針が示された。

 8月26日付事務連絡では、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、「指針」)で受講を求めている研修について、4月10日付事務連絡で示された診療を実施する医師は、可能な限り速やかに受講すること、遅くとも2021年3月末までに受講することが示された。さらに、この研修はオンライン診療に特化した内容であるが、不適切な事例があったことを理由に、電話による処方のみを行う医師にまで受講を義務付けている。これを機にオンライン診療浸透を図っていきたいとする狙いがあるのではないか。

 そもそも、電話等での処方は医師法第20条で無診察診療として禁止されている。一連の時限的措置は、本来であれば認められない行為である。「指針」に基づくオンライン診療についても、対面診察と組み合わせること、緊急時の対応、疾病の限定など、「最低限遵守すべき事項」が明記され、厳格に遵守するように定められている。

 電話等初診については、一度も診たことのない患者からの電話等の訴えだけで医療を行うこととなり、極めて異例な取扱いだ。7月に協会が実施した会員署名の自由意見欄には、患者を直接診療できなかったことによる症状悪化事例が多数寄せられた。非常事態とはいえ、症状が悪化したり、QOL が下がってしまっては、本末転倒であるといえよう。電話等での診療には限界があり、時限的取扱いをなし崩し的に容認していくことに現場の不安は増している。

 今回の事務連絡は、これまで求めていなかった研修の受講を義務付けるという、突然の取り扱いの変更である。本来であれば、患者が安心して対面診療を受けられる体制を国が構築すべきであるが、度重なる「特例」「取り扱い変更」の事務連絡発出により、現場の混乱は増すばかりである。改めて、患者が安心して対面による受診ができる体制構築に、国が責任を果たすよう強く求めたい。

以上