50%超が外来患者3割以上減

公開日 2020年11月26日

記者会見で地域医療の危機的な現状を訴えた。左から吉田副会
長、須田会長、細田理事、水山理事(2020年10月8日、厚生労働省内)
 
 

 

 協会は9月14日、会員医療機関4685件に第4回「新型コロナウイルス感染症による医業経営への影響【アンケート】」をFAXで送付し、9月18日までに都内683件の医療機関から回答を得た(回収率14・6%)。回答からは、9月に入っても続く厳しい医業経営の実態が浮き彫りになった。

外来患者・保険診療収入減少傾向続く

 集計の結果、一般診療所(回答数645件)の83・3%で外来患者数が減少、81・4%で保険診療収入が減少していることが明らかになった。また、5割の医療機関で、外来患者数と保険診療収入が3割以上減少していた。外来患者数と保険診療収入が5割以上減少している医療機関は12%を超えた(図1・2)。

 6月に当会が実施した同内容の調査と比べると、外来患者数と保険診療収入でやや改善の傾向が見られるものの、9月上旬も依然として患者の「受診控え」が続いている。

約4割が「融資を受けた」と回答

 「当面の資金調達のために融資を受けましたか?」との問いに、39・2%が「何らかの融資を受けた」と回答した。借入先の内訳は、独立行政法人福祉医療機構が16・6%、その他の金融機関が22・6%となっている(図3)。

持続化給付金、家賃支援給付金 約7割が支給対象外

 持続化給付金と家賃支援給付金は、支給要件が「1カ月の売上高が前年同月比▲50%以上」などと厳しく、持続化給付金は65・8%、家賃支援給付金は76・4%が「支給対象外」と回答した(図4・5)。アンケートには、「ギリギリ対象にならなかった。数%の違いで対象外となるのは疑問だ」「せめて家賃支援給付金の対象拡大を検討してほしい」などの切実な声が多く寄せられた。

雇用調整助成金約3割が「申請した」と回答

 雇用調整助成金は「申請した」との回答が28%を占めた。「受診控え」が続く中で、約3割の医療機関が従業員を休業させるなどして雇用調整助成金を利用していることが明らかになった(図6)。

今こそ医療機関への財源措置を

 医療機関は、新型コロナウイルス感染患者を受け入れている、いないに関わらず、地域で役割分担をしながら、医療提供体制を担っている。

 政府は9月15日、第二次補正予算の予備費10兆円から新型コロナ追加対策として、1兆6386億円を支出することを閣議決定したが、その内訳はいずれも新型コロナ感染症患者または疑い患者に対応する医療機関に限定されている。感染患者を受け入れていない病院・一般診療所への支援(減収補填)は見送られた。

 地域医療を守り、医療崩壊を防ぐために、協会は①患者が安心して受診できる環境を早急に整備すること、②新規開業を含むすべての医療機関に対し、診療報酬「概算払い」を活用した減収分への給付など、緊急の財政措置を講じ、医療機関が存続できるようにすること、③家賃支援給付金制度の支給要件を緩和すること、の3点を緊急施策として実現するよう政府に要望している。

厚労省内で記者会見

 同アンケートの結果を受けて、協会は10月8日、厚生労働省内で記者会見を行い、須田昭夫会長、吉田章副会長、細田悟理事、水山和之理事が参加した。

 冒頭、挨拶した須田会長は、「コロナ禍は、新自由主義政策にもとづいて医療費が抑制されてきたことがもたらした人災であり、社会の脆弱性を浮き彫りにした」と述べた。

 同アンケートの結果を紹介した吉田副会長は「給付金・助成制度が、受け取れるか全く受け取れないかの二択しかない。テナント料は医療機関の存続を危うくしており、家賃支援給付金の支給要件緩和が必要だ」と指摘した。水山理事は「融資を受けて当座をしのいだ医療機関も、5年後には返済を求められる。また小児の定期予防接種の接種率が落ちていることも問題だ。本当の危機は数年後にやってくる」と述べた。

 細田理事は、「国はコロナ禍を災害として位置付け、災害医療としての手当をすべきだ」と訴えた。

 会場からは、「特にどの診療科の影響が深刻なのか」などの質問が寄せられた。

(『東京保険医新聞』2020年10月25日号掲載)