[シリーズ]コロナ禍での診療を考える⑥

公開日 2020年11月26日

コロナ禍での診療を考える⑥ コロナは西へ

双葉会診療所 片倉 和彦

 田舎の一本道は、普段はすいているのですが、ちょっとなにかあるとばたばたと渋滞してしまいます。当診療所もちょっとなにかあるとばたばたしてしまいます。

 昨日はこういうことがありました。新たに発熱した特養の利用者にコロナ抗原検査を施行して、28分後に判定した時には陰性だったのにさらに15分ほどしてそのキットを捨てようとしたときに陽性ラインが出てきていて、説明書どおりならば陰性と判断していいのですが、なにしろ190床の特養の中の動ける認知症の方なので、万一のことを考えて、個室にして感染症予防をして、今日新たに実施したPCR検査の結果を待つことにしました。

 当所はへき地にある社会福祉法人立の在宅支援有床診療所です。10床入院設備と隣接している190床の特養、ほかにもう一つの85床の特養とがあります。もともと外来人数は多くなくて、でも、特養での回診や緊急往診や地域の往診などもあり、年間看取り数は50~60人ほどです。

 発熱時対策として外来患者の場合は外の駐車場で待っていただいて、コロナ抗原検査をして結果をみてから診察をしています。特養で熱が出た人の場合、利用者180人それぞれの日ごろの状況を考えつつ、コロナ検査を行うか、どう行うかを判断しています。持病や衰弱で発熱が繰り返されている方の場合は経過観察、新しく熱が出てきた方の場合は鼻腔コロナ抗原検査をやることが多いです。富士レビオの30分キットあるいは大塚の15分キットです。さらに心配な状況の時にはPCR検査をBMLに提出しています。利用者は認知症の方が多くて唾液採取が困難なため、鼻咽頭や鼻腔での検体採取です。

 いざCOVID―19の感染者が特養利用者や特養職員に出てきたら…そう遠い先のことではないかもしれませんが…、大変だと思います。看護介護職員と一緒に防護衣の着脱やレッドゾーンシミュレーションをやってはいますが、でも、大変です。西多摩保健所から町役場経由で回ってきたマニュアルが一番具体的なので、参考にしています。

(『東京保険医新聞』2020年11月5日号掲載)