【総理大臣・厚労大臣宛】新型コロナウイルス感染拡大防止に係る緊急要望書

公開日 2021年01月18日

2021年1月15日

内閣総理大臣    菅 義偉 殿
厚生労働大臣  田村  憲久 殿

東京保険医協会
会長   須田 昭夫
研究部長  申 偉秀

新型コロナウイルス感染拡大防止に係る緊急要望書 

 日頃の厚生労働行政に対して敬意を表します。全国的な新型コロナウイルス感染症罹患者数は2度目の緊急事態宣言にもかかわらず減少がみられない状況です。東京都においては重症者が130名を超え入院病床や病院機能が逼迫し、陽性者を医療につなぐ保健所機能の不足も深刻化しています。
 新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためには、緊急事態宣言の実施を徹底するとともに、若年者を中心とする感染力のある方に新型コロナウイルス感染症判定のための検査を促し、陽性者を把握して確実に隔離することが必要です。政府には実効性ある感染防止策を速やかに国民に提示し、わかりやすく呼びかけることがいま求められています。
 私たちは東京都内のかかりつけ医の団体として、新型コロナウイルス感染症による医療崩壊を防ぎ国民のいのちと健康を守るため、以下の4点を緊急に要望いたします。
 

要望1. 新型コロナウイルス感染症専門病院を早急に設置すること

理由:東京都は新型コロナウイルス感染症専門の病院・病床として、旧都立府中療育センター、東海大学医学部付属東京病院の2カ所を整備するとしましたが、昨年12月16日に旧都立府中療育センターで32床が開設されたのみです。急増する陽性者の入院需要に応じられず入院調整が難航し、一方で受け入れ先病院での感染拡大の報告も相次いでいます。
 感染症専門病院においてはクラスター発生がないのに対して、軽症・中等症患者を受け入れている病院には院内感染が多く、通常診療に支障をきたしている状況は、まさに病院崩壊の瀬戸際と言えます。人員配置や診療効率、なにより院内感染防止の観点からも、現在ある都立・公社病院については、新型コロナウイルス感染症を受け入れの対象としない救急・急性期病院に再編し、並行して新型コロナウイルス専門病院を早急に設置してください。これにより、感染防御訓練を受けた医療従事者がローテーションを組んで診療にあたることが可能になり、新型コロナウイルス感染症の重症者を診療しない病院での、通常診療機能を回復することができます。

要望2. 新型コロナウイルス対策を専門に行う部署を行政に設置すること

理由:保健所が行なう、発熱や不安を感じる住民への対応、陽性者の入院・宿泊施設への手配、濃厚接触者のフォローアップなど、感染急拡大により対応機能の不足が深刻化し、都内では発生届を受けた患者に、保健所からの連絡が数日後になることも稀でなく、昨年12月からは、待機中に病状が悪化する事例が急増しています。
 行政改革や1994年の保健所法の改正などにより、全国の保健所数は1992年の852から2020年には469とほぼ半減し、平時には機能していても新型コロナウイルスのようなパンデミックには対応することができません。したがって、通常の保健所機能とは分離し、新型コロナウイルスに対応する部署を別途設置し、新たな部署に十分な人員を配置することを望みます。

要望3. 感染力のある患者の、診断と早期治療を「診療・検査医療機関」が担当できる体制を整備すること

理由:現在、全国3,000カ所以上の「診療・検査医療機関」が新型コロナウイルス感染症患者に対応していますが、適正な感染予防につながっていない現状があります。その理由の一つとしてPCR検査のCt(Threshold cycle)値が挙げられます。現行のCt値は感染性を示す35より大きい40-45に設定されており、感度が高すぎます。PCR陽性者の大多数は無症状または軽症で治癒し、周囲への感染性もありません。この傾向を知った若年世代などで受診・検査へのインセンティブが働いていません。この齟齬を解消するには、Ct値をウイルス培養、抗原検査と同時に行い感染性を示す設定値に変更すれば、PCR/抗原検査によって実際に感染力のある症例を診断できるようになります。結果として若年世代にも検査を受けるためのより強いインセンティブが生まれます。
 さらに感染力が強い発症早期に、診療・検査医療機関で一定の効果を持つ抗ウイルス薬を処方できれば、患者にとってメリットとなり受診を希望するでしょう。抗ウイルス薬候補薬として国産薬ながら海外の治験結果待ちとなっている「ファビピラビル」、治験が開始されている「イベルメクチン」などについて支援を強めて、有効性と安全性を確認したうえで早期に認可・承認・販売していただきたいと思います。

要望4. 介護福祉現場へ感染防護具を定期的に配布すること

理由:政府の新型コロナウイルス対策分科会の報告によると、昨年12月に発生した807件のクラスターのうち45%(361件、感染者数は62%にあたる8,191人)が医療機関・介護福祉施設で発生しています。介護福祉施設には高齢者及び障がい者が居住しており、重症化の高リスク集団であるばかりでなく、対面介護の現場は業務上三密になります。さらに介護福祉現場には新型コロナウイルス感染者数の多い、若年世代が多く勤務しています。
したがって介護福祉施設での従事者に対する感染教育の実施とともに、「診療・検査医療機関」へ実施されている定期的な感染防護具の配布を、同様に行うよう要望します。

以上

新型コロナウイルス感染拡大防止に係る緊急要望書(国・厚労省宛・提出版)[PDF:127KB]