公開日 2021年02月13日
2021年1月20日
感染症法等の処罰規定に反対する声明
東京都保険医協会
会長 須田昭夫
政策調査部長 吉田 章
1月18日に開会した第204通常国会に、感染症法等改定案が提出されます。この法案には、新型コロナウイルス感染症の感染者・患者が、都道府県知事による入院の指示を拒否したり、感染経路をはじめとした保健所の調査に対して回答を拒否または虚偽の回答をしたりした場合に、刑事罰や罰則を科す規定が盛り込まれる予定です。刑事罰・罰則が科されることにより、周囲からの偏見や差別が助長され、感染者・患者の人権が著しく侵害されるおそれがあります。
感染症法の前文には、偏見によって感染症の患者を差別した反省が述べられています。社会の安全を理由とした強制措置によって、多くの人権侵害が引き起こされてきた歴史を繰り返してはなりません。また、仕事を休むことができない人、育児や介護などのために入院しにくい人などが必要な検査を受けなくなる懸念があります。人々が、症状や検査の結果を隠すようになれば、感染状況の把握がいっそう困難になって、正しい対策をとることができなくなり、本末転倒です。
1月18日時点で、東京都における自宅療養者は9,000人以上、入院等を調整している人は7,700人にのぼります。そもそも、入院できる病床が不足している状況で入院を強制することに矛盾があります。必要なことは、感染者・患者が入院治療を受けられるための支援であって、感染者・患者を処罰することではありません。自宅療養中に死亡する事例も相次いでおり、感染者・患者のいのちや人権が保障されている状況とは言えません。
私たちは、国民・都民のいのちと健康を守る保険医の立場から、感染者・患者が安心して入院・療養できる環境の整備とともに、感染症法等の改定にあたって、刑事罰・罰則を科す条項を設けないことを求めます。
以上