[談話]取り返しがつかなくなる前にさらなる支援を

公開日 2021年03月18日

取り返しがつかなくなる前にさらなる支援を

 


病院有床診部長 細田 悟 

 

 2月26日付で、6歳未満の小児に算定できる乳幼児感染予防策加算(100点)と特例の二類感染症患者入院診療加算(750点)の算定期間が延期され、医科外来等感染症対策実施加算(5点)および入院感染症対策実施加算(10点)が4月に新設されることとなった。さまざまな診療点数について加算できることは、算定の機会が増え、評価できるものであるが、新型コロナウイルス感染症の拡大で医療機関が被った減収を補填しきれるものではない。そもそも診療報酬での補填は、患者負担の増加が伴い、根本的解決にはならない。

 2月12日の衆議院予算委員会で、宮本徹議員が田村厚労大臣に次のように質問している。「多くの病院が減収で苦しんで、借り入れを重ねております。福祉医療機構の医療機関への新規貸し付け金額はいくらになっているでしょうか?」対して田村大臣は「2020年度は12月末までの危機対応融資の額が1兆1260億円(中略)4月から11月までの8カ月間で、医療機関全体の減収は1.2兆円(中略)地域医療というものを守れるように頑張ってまいりたい」と答弁した。今回の診療報酬の加算は、この答弁を実現するための政策の一つと考えられる。

 さて、現場の実例で検証してみたい。A病院は、病床数180床の中規模地域2次救急基幹病院である。スタッフのボーナスなど給料の手当てのため、昨年医療福祉機構から5億円借り入れを行った。1日10点(=100円)の加算で常に満床180人の入院患者と想定して、5億円を超えるのはなんと76年以上かかる。厚労省の事務方は、一桁間違えたのではないだろうか?

 東京保険医協会は再三にわたり、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震の際に実施された前年実績による診療報酬の概算払いを認めるよう要望してきた。新型コロナウイルス感染症拡大で医療機関は疲弊している。一刻も早く医療機関経営の立て直しが図られるよう今後も活動していく。

(『東京保険医新聞』2021年3月15日号掲載)