[寄稿]オンライン資格確認未対応で患者にマイナンバーカードを提示されたら

公開日 2021年06月11日

オンライン資格確認未対応で患者にマイナンバーカードを提示されたら


政策調査部長 吉田 章

 まず、確認しておきたいことは、マイナンバーカードによる保険証資格のオンライン確認については医療機関に義務として課せられていないということです。現在、保険証は相変わらず発行されていますし、保険証での資格確認が無くなるわけでもありません。

 では標題のような場合にどう対応したら良いか。これは支払時クレジットカードを提示された場合を考えれば良いのではないでしょうか。

 最近時々、「クレジットカードは使えますか?」と聞かれることがあります。「当院では取り扱っていません」というと特に問題は無く現金で支払われます。それと同様に、「マイナンバーカードを使えますか?」といわれたら、「当院では取り扱っていません、保険証でお願いします」と答えれば問題はありません。

 もし、マイナンバーカードしか持っていない場合はどうしたら良いでしょうか。それは保険証をもっていない場合に準じて対応すれば良いでしょう。

 一時自費扱いで診療し、保険証を後日持ってきてもらったときに清算をするわけです。マイナンバーカードでの資格確認は義務ではないのですから、使える医院と使えない医院があって何もおかしくはありません。クレジットカードが使える店と使えない店があるのと同様です。

 ただ、できるだけトラブルを未然に防ぐという観点から、「当院ではマイナンバーカードでの資格確認は行っていません」と言うメッセージを院内掲示等しておくことが望ましいと思われます。

オンライン資格確認設備導入を検討している方へ

 保険証資格をオンラインで確認したいと思っている方も少なからずおられると思いますが、オンライン資格確認はマイナンバーカードを使わなくても保険証で行えます。オンライン資格確認の方法は3通りあります。

⑴マイナンバーカードで顔認証をおこなう場合
⑵マイナンバーカードで暗証番号を使う場合
⑶保険証で被保険者番号を使う場合 

 政府補助金は⑴の顔認証のための設備を入れる場合しか出ませんが、補助金不要であれば⑵、⑶も可能です。保険証の期限切れなどを確認したいと希望される場合は⑶で十分ですので検討の余地は大きいと思われます。

 最後に、資格確認システムを入れる場合、レセコンや電子カルテの院内システムと接続することについてです。政府は資格確認センターから得た資格情報をレセコンに自動転記し手入力の手間を省けるよう資格確認システムと院内システムを接続することを勧めています。

 しかしこれは危険です。資格確認システムはインターネット経由で運用されます。セキュリティ対策を十分実施するといっても危険がなくなるわけではありません。院内システムには医療情報という患者さんのプライバシーが集積されています。万が一、外部に流出した場合のことを考えると絶対に接続はしてはならないと考えます。また、ウイルスなどが侵入し院内システムが停止、破壊された場合、診療そのものが不可能になってしまう危険も考えられます。

 したがってオンライン資格確認システムを導入する場合でもあくまでも独立したシステムにとどめておくことが肝要です。

(『東京保険医新聞』2021年5月5・15日合併号掲載)