[声明]「自宅療養を基本とする方針」の撤回を求めます

公開日 2021年09月02日

2021年8月5日

内閣総理大臣      菅 義偉 殿

厚生労働大臣     田村 憲久 殿

経済再生担当大臣 西村 康稔 殿

東京都知事   小池  百合子 殿

                         東京保険医協会

会 長 須田 昭夫
   政策調査部長 吉田 章

 

 

「自宅療養を基本とする方針」の撤回を求めます

 

 

 政府は8月2日、新型コロナウイルス感染症の急増に対して、重症患者や重症化リスクの高い患者だけを入院させ、中等症以下は自宅療養を基本とすることを発表しました。

 これまでは、中等症Ⅰ(呼吸不全なし)は「入院の上で慎重に観察」、中等症Ⅱ(呼吸不全あり)は「高度な医療を行える施設へ転院を検討」とされてきました(厚生労働省「新型コロナウイルス感染症診療の手引き、第5.2版)。中等症の患者が自宅で療養することは危険であり、最初から入院することが明記されています。自宅療養を基本とする政府の方針は、医療現場に大きな衝撃をもたらしています。在宅では中等症患者の症状把握や急変時の対応が困難であり、死の危険に繋がります。

 政府はこのような重大な方針変更を、国会や医療の専門家の会議に諮ることもなく、突如として発表しました。新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は8月4日、衆院厚生労働委員会の閉会中審査で、「政府とは毎日のようにいろいろなことで相談、連絡、協議しているが、この件に関して相談、議論したことはない」と述べました。世界中の医療関係者が積み上げてきた、治療に関する指針を無視する暴挙に抗議します。

 無症状・軽症患者に関しても、自宅での経過観察は容体の急変に対応できない、家庭内感染のおそれがある、などの理由で厚労省は「原則として宿泊療養施設で療養・健康管理」する方針をとってきました。今回の方針転換では、「自宅療養ができない場合に限り宿泊療養をする」とされており、宿泊療養施設も圧縮されます。

 コロナ感染症患者が入院できなくなって、死亡の危険がある中等症の患者が、自宅や入所施設にとり残されることはまさに「医療崩壊」であり、「自宅療養を基本とする方針」の即時撤回を求めます。

また、各方面からの意見を無視して感染拡大につながる五輪大会の開催を強行してきた政府と東京都には、医療提供体制を確保して国民の生命を守ることに全力を尽くすことを求めます。

以上

 

完成版【声明】「自宅療養を基本とする方針」の撤回を求めます[PDF:110KB]