【要望書】都立・公社病院の独立行政法人化に伴う「東京都立病院機構」設立案を撤回してください

公開日 2021年10月05日

2021年10月5日

東京都知事 小池 百合子 殿

 東京保険医協会        会長    須田 昭夫
     病院有床診部長 水山 和之
東京歯科保険医協会   会長 坪田 有史
 

都立・公社病院の独立行政法人化に伴う「東京都立病院機構」設立案を撤回してください


 

 

 

 東京歯科保険医協会および東京保険医協会は、あわせて都内の保険医約11,500人が入会する団体です。東京都民の医療と福祉の向上に尽力されていることに敬意を表します。

 さて都知事は、9月28日より開催されている第3回東京都議会本会議において、2022年7月に都立・公社病院を独法化し、「東京都立病院機構」を設立する方針を表明されました。都議会に提出された「地方独立行政法人東京都立病院機構定款」案には、行政的医療の提供を続けること、災害等が発生した時には、知事の指揮のもとで医療を提供することが記載されています。しかし独法化すれば、一般会計からの組み入れ金が削減されることは明らかであり、コロナ禍における拙速な独法化は医療崩壊を加速させる恐れがあります。

 2021年1月には東京都知事の指揮下で、都立広尾病院、都立豊島病院、公社荏原病院にコロナ専用病床を作ることで、COVID-19第3波における医療崩壊を見事に回避することができました。しかし第5波では、都立・公社病院の約2,000床(全病床の約28%)をコロナ病床に転換し、都内コロナ病床の約3割を担当しましたが、自宅・宿泊療養所など病院外で死亡する事例が都内でも100人を超え、8月23日には、都知事と厚労相の連名で都内すべての医療機関に対し、さらなるコロナ病床確保や人材派遣を要請しました。現状でも決して公立病院のコロナ病床が十分とは言えない状況です。

 政府は2020年に「新公立病院改革ガイドライン」を示す予定でしたが、感染状況等を踏まえて病床削減を事実上延期しています。このような時期になぜ、都立病院・公社病院だけが経営の効率化を掲げ、医療従事者の待遇や給与の変更を伴う独法化を急ぐのでしょうか。

大阪府では、2006年4月に府立病院を独法化して、府議会にも諮ることなく個室料や文書料等の住民負担を増やし、入院期間の短縮化等、採算優先の病院経営を推し進めました。その結果、大阪府ではコロナ蔓延下で病床が逼迫し、医療崩壊に至りました。独法化による経営優先の運営では、有事への対応が不十分なことが証明されたのです。

 現在、新型コロナウイルス検査の陽性者数は減少傾向にありますが、今後の感染再拡大はもとより、新しいパンデミックや災害などに対して、公立・公的病院としての不採算医療が必要です。都立・公社病院の独法化による独立採算制を進めることにより、不採算医療の切り捨て、人材流出などのリスクを冒すことは看過できません。都民のいのちと健康を守るために、「東京都立病院機構」設立案を撤回してください。

以上

都立・公社病院の独立行政法人化の「定款」案を撤回してください[PDF:2.23MB]